近頃は、買い物に出向いた折には、なるべく「自ら勘定をする機械」――いわゆるセルフレジなるものを使うよう心がけており申す。
他人任せにせず、己が手で一つ一つ品を読み取らせるという作業、これがいかにも気持ちよく、終われば小さきながらも何か一つ務めを果たしたような、達成の心持ちがいたし申すゆえ、いたく気に入っておりまする。
思い返せば、この自ら勘定する機械が世に出回り始めた頃は、いささか怖き気持ちもあり申した。しかしながら、これからの世は、かような仕組みが主となるやもしれぬと感じ、客の少なき時を見計らい、思い切って使ってみたのが始まりにて候。
挑戦と申せば些か大げさに聞こえましょうが、拙者ほどの齢になりますれば、何事も新しきことに手を出すは、なかなか一大事にて候。これを克服し、新しきものに馴染んでゆくことこそ、隠居のたしなみとも申せましょうか。
行きつけの近所の商店にて、この手の機械に慣れてからは、他の店においても試してみ申した。基本は「品に付けられし印」(バーコード)を読み取らせることにて、多少機械の見た目や作法が違えど、さして戸惑うこともなくなり申した。
また、ある店などでは、商品の読み取りは店の者が行い、支払いのみを客に任せるという式もあり申すが、これもまた悪しからず。とは申せ、拙者にとっては、やはり一つ一つの品を己の手で読み取らせてこそ、満足というものが生まれるように感じられまする。
さて、かの「ユニクロ」なる衣類屋――その勘定場は、少々異なる作りにてござるゆえ、出かける前に「ユーチューブ」という書画入りの伝達書を使い、予め勉強して臨み申した。
籠をそのまま置けば、あれよあれよという間に、品名・値段・合計額までもが一度に現れ申した。なんでも、品に付された「小さき符号」(ICタグ)を読み取る仕掛けとのことで、まことに見事な働きにござる。予習の甲斐ありて、滞りなく買い物を終えることができ申した。
尤も、いかに見事と感じはしたものの、正直なところ、拙者にとってはあまり面白きものではござらぬ。
やはり、品一つ一つに手をかけ、「ぴっ」と音を立てて読み取らせる作業の中に、何とも言えぬ愉しみと充実があるように思え申す。機械にすべて任せるよりも、己の手を通して完遂することの方が、隠居の身にとってはよき刺激となるように存じまする。
2024年10月26日ーこのページー2024年10月28日