親が亡くなったとき、離れたところに住んでいたこともあって、どこに何があるかわからず、いろいろ大変でした。そのとき、自分しか分からないことはきちんと書き残して置くべきだと実感したものです。
そこで、相続などが一段落した直後から、自分のエンディングノートを作りはじめました。
最初は、財産目録とか、SNSのパスワードなど思いつくままに書いてみました。
ひと通り作ってから、ネットでエンディングノートの作り方を検索して自分のをチェックしたところ、ずいぶん不備があることに気付きました。
そこで、エンディングノートの作り方について、ネット情報をもとに自分の経験値を加味して次のようにまとめてみました。
そもそもエンディングノートとは
エンディングノートは、遺される人に対しての引き継ぎ文書です。
自分が引き継いだ時の経験からいうと、必ずしも全部を網羅していなくても、かつ、多少不正確になっていたとしても、書き物が残っていた方がはるかに楽に事を進めることができます。
だから、エンディングノートを作ろうという気持ちを持って、一枚でも書き始めることが一番大事です。そのうえで、作るならばできるだけ必要な事項を網羅して、かつ正確であることが求められるということです。
次にあげる項目は必要だと思います。
□ 親戚や友人のリスト
□ 所属している団体等のリスト
□ 暗証番号・ID・パスワード等のリスト
□ 財産目録の作成
□ 遺言書の作成
□ 延命治療についての考え
□ 葬儀についての考え
項目ごとに説明してみます。
親戚や友人のリスト
住所録を作っている人は多いですが、それは単なる一覧です。年賀状の束も、交際があったことが分かるだけで、その濃淡は分かりません。
□ 葬儀に呼びたい人、
□ すべてすんだ後に知らせたい人、
□ 全く知らせたくない人、
いろいろいます。同じではないはずです。
特に遺族にとって必要なのは、亡くなったときに連絡が必要な人のリストです。
記載事項は、氏名と連絡先、自分との関係です。
住所録にマークするだけでもよいのですが、その場合は、エンディングノートの方に、どの住所録に書いてある旨を記載しておきましょう。
数が多すぎると連絡するのに大変です。この人に連絡すればその関係は大丈夫、という人がいるものです。そのようなことも書いてあると助かります。
遺族の事情で、家族葬など、簡略な葬儀を選択することもあります。そのようなときに備えて「このようなリストを作ったが、あくまでも参考までに作成したものなので、扱いは、そのときの都合により皆に任せます」と書いておくと遺族の負担を減らすことができます。
所属している団体等のリスト
リタイアしてからでも団体に所属していることは多いものです。
老人会などの地域団体、趣味のグループ、同窓会などなど、
それらの加入団体のリストを作ります。
団体名と、連絡方法は必須です。
その場合、いざという時の連絡が必要か、それは誰にすればよいのか、退会の手続きはどうすればよいのか、詳しく記載しておきましょう。
年会費が口座振替になっている場合は、特に手続き方法が大事です。
自分が役員や事務局を引き受けているときは、書類等を自宅に預っていることがあります。どこに関係書類を置いてあるのか、それらは誰に引き渡せばよいのかも記載しましょう。
また、日頃から、そのような書類は一ヶ所にまとめて保管して、できれば箱一つを渡せば済むようにしておきたいものです。
暗証番号・ID・パスワード等のリスト
パスワードやID等は個人情報のなかでも、漏えいすれば被害を被る可能性が高い、重要な個人情報です。
自分が亡くなったあとに、SNSなどの解約をしてもらいたい、いろいろなサイトの会員になっているが解約してほしい、などの希望があれば、事後の処理をしてくれる人にパスワード等を残しておかなければなりません。
パスワードなどのメモなどを作ったときは、人目にふれることなないように慎重に管理しなければなりません。
ところが、あまり慎重に管理すると、いざというときに見つからないおそれがあります。
パスワード等を紙に書いて、封筒に入れて割り印して机の中に入れておくことが考えられます。
遺言書と間違えられると、検認のために家庭裁判所に持って行かれるかもしれません。かと言って、パスワード在中などと書くのはちょっと危険です。
宛名を書き、「お願いしたいことが書いてあります。死後、または認知が衰えたら開封してください」などと書くのが無難です。
新しいことを始めることもあるし、やめることもあります。年に一回は点検して最新の情報に書き直しましょう。
フェイスブックなどのSNSは、そのままにしておいてもよいのかもしれませんが、閉じてほしいと思うのであれば、事後の処理をする人がログインできるようにしておきたいものです。
銀行口座の暗証番号は、死亡すれば口座が凍結されるので、暗証番号等を残しておく意味はありません。
ネット銀行の場合も死亡時にはログインして処理しないで、カスタマーセンター等に連絡して正規に解約手続きをしなければなりません。
蛇足ですが、他人が預金を引き出すのは法律違反だし、他の相続人ともめることが多いのでお勧めできません。
アマゾンや楽天などのショッピングサイトの退会は、ログインできれば割に簡単にできます。ログインできないと、ちょっと難しくなるでしょう。
まとめると次のようなものが対象です。
□ フェイスブックなどSNSのIDとパスワード(仕事で使っているホームページなども含む)
□ アマゾン、楽天などの購入サイトのパスワード
□ その他利用しているネット上でのサービスのIDとパスワード
□ その他いろいろな登録サイトのIDとパスワード。スケジュールを記載した手帳の場所
□ パソコンやスマホ等へのログインのためのパスコード
などなど。
財産などのリスト
土地や家屋などの不動産をはじめ、預金口座、有価証券、貴金属、不動産の書類、年金関係の書類、ローンの書類、自家用車の書類、自動車保険や火災保険など、生命保険、クレジットカード(ETC含む)など、すべてリストアップしましょう。
財産の処分について希望があるときは、エンディングノートに書くだけでなく、正式な遺言書の方がよいでしょう。
不動産について
不動産については、「登記事項証明書」「固定資産税・都市計画税納付書」「名寄帳兼課税台帳」を準備して、分かりやすくファイルしておきましょう。
不動産の境界についても、写真などを用いてなるべく分かりやすくしておきましょう。隣地の所有者が分かっていれば、連絡先、その他注意するべき事項を欠き残しておきましょう。
借金のリストは重要です。自分の借金でなくても他人の連帯保証をしている場合は、しっかりとリストアップしましょう。隠しておくと、相続した家族が大きな迷惑を被ることにあります。
預金や有価証券など
預金や有価証券などについては、どこに口座を持っているという一覧表を作りましょう。
特にネットバンクやネット証券などは、通帳などの紙の書類が手元にないことが多く、また、銀行等からの連絡も郵送でなくメールが使われることが多いので、一覧表がなければ相続人が存在に気付かないこともあります。
ネットバンク等の場合は、会社名、支店名、口座番号、口座名義だけでなくIDも記載しておきましょう。各社とのやりとりがスムーズになります。
ハンコ、キャッシュカードやクレジットカード、その暗証番号、ネットバンキング等のパスワードは、記載してもあまり意味がありません。
預金が凍結されるのでハンコや暗証番号、パスワードは意味が無くなるからです。
凍結されなくても亡くなった人の預金等を引き出すのは違法です。遺言書の開封や、遺産分割協議などの正規の手続きを経て、銀行等への解約手続きに進むことになります。
銀行等の死亡解約においてはハンコや暗証番号等は必要ありません。ネットバンク等においても、解約の手続きはログインして行うのではなく、ホームページからメールで、あるいは電話で亡くなった旨の連絡して、銀行等の指示により必要書類を整えることになります。
延命治療などについて
エンディングノートには、延命治療などについての希望を記載しましょう。
自分のことは自分が決めるのが基本だと思います。いざというときは家族などに任せざるを得なくなりますが、意思を残しておくと家族などが判断する際の助けとなります。
告知の有無
ガンになったとき、今は医師から本人に告知するのが一般的になっているようですが、やはり、家族はそうした話題にはふれにくいものです。
知らされるとがっかりして死期が早まるという意見があります。それも一理ありますが、知らされないと、自分が死ぬまでにやっておきたいこと、整理をつけておきたいことが、やれなくなってしまう可能性が高まります。元気なうちに、本人から、そうしたときは伝えてほしいと言っておくべきだと思います。
延命治療
病院に入院すると、医師はなんとか命を長引かせようと努力します。心臓がとまれば電気ショックや心臓マッサージをし、食べれなくなれば胃ろうをつけて直接養分を流し込み、呼吸できなくなると呼吸器をつけることもあります。
命を長らえさせる努力はありがたいのですが、最期の時期にあまり治療や検査をしない方が、本人にとって楽な場合もあるように思います。
臓器提供
高齢者は体が弱っているので、提供できるものが少ないかもしれません。しかし、使えるか使えないかは医療機関が判断することですから、希望がある場合は意思を表明しておきましょう。
運転免許証や健康保険証、マイナンバーカードの臓器提供意思表示欄に記載しておくと、医療機関が連絡をとってくれます。
また、公益社団法人日本臓器移植ネットワークでは、インターネットによる意思登録のシステムがあります。
献体を希望する場合は、生前から、居住地近辺の医学・歯学系の大学または献体の会に登録しておく必要があります。
意思表示のしかた
病院に入院する時や老人ホームに入居する際に、「延命治療に関する意思確認書」や「終末期医療の事前指示書」というような書類への記入を求められることがあります。名称はいろいろです。
これは、本人が意思表示できなくなったときに備えて、延命治療についてあらかじめ記入しておくもので、リビングウィル(生前の意思)ともいいます。
この文書は、入院や入居するときに限らず、元気なうちに自分の意志を書面で残しておくためにも使われます。口頭で伝えていてもよいのですが、文書があった方が、より明確に本人の意思が表せるので影響力が違います。
遺言書に書いても、遺言書は死亡後に開封するものですから、告知や延命治療には間に合いません。遺言書とは別に、文書化するべきです。
意思表示の記載例
家族の皆さんへ
私が病気になったときは、次の事項については私の意志を尊重してくれることを希望します。
記
1.ガンなどの回復が望めない病気になったときは、隠すことなく状態を知らせてください。後始末したいこともあるので、よろしくお願いします。
2.最期はできれば自宅で迎えたいと思っていますが、お手間をかけるのは心苦しいので、介護施設、病院など、状況によって皆さんが選択してくれるやり方にお任せします。
3.心臓や呼吸が停止した時は救急蘇生治療はしないでください。人工呼吸器はつけないでください。
4.食事を口から食べられなくなったときに胃ろうをつくるのはやめてください。
5.亡くなったあと、使える臓器があれば、それを使って少しでも状態が改善される人がいればうれしいので、是非使ってほしいと思います。健康保険証に意思を記載しています。
6.私は〇〇大学の〇〇会の会員として献体を約束しています。死亡後は〇〇会にすぐに連絡してください。
以上の通りお願いいたします。なお、ここに記載した以外に私に代わって意思決定をしなければならないことがあったときは、長男〇〇に、ご面倒をおかけしますが、判断をお願いします。
令和〇年〇月〇日
署名 〇〇〇〇
葬儀についての考え
どんな葬式にしたいのか希望を書いておきます。
菩提寺があれば連絡先、なければどのお寺にしてほしいか、葬式の会場についての希望を書いておきます。
連絡してほしい人のリスト、弔辞を読んでほしい人などを書いておきます。
希望してもその通りになるとは限りませんが、希望があれば遺族はなるべくそうしてやろうと思うものです。
葬儀社によっては、事前に一定額を払い込んでおく方法があるので、話しを聞いてみましょう。この場合、1ヶ所だけでなく、数社から話しを聞いてじっくり検討して決めましょう。
葬儀社を決めた場合は、その旨と内容を、喪主をやるであろう人に伝えておくとともに、エンディングノートに記載しておきましょう。
自分が入るお墓が決まっている人はよいのですが、お墓がない人もいます。
できれば元気なうちにお墓を用意できればよいのですが、お墓の用意なく、そしてその意思や希望を伝えず本人が亡くなってしまうと、家族はどうすれば良いかと悩んでしまいます。
実家の墓に入れてもらいたい希望があれば、先に了解を得ておき、誰の了解を得たかも記載しておきましょう。
合同の納骨堂にいれてもらいたい場合や散骨などを希望する場合も、事前に調べて、その場所、料金等を記載しておきましょう。
エンディングノートの保管
せっかく書いても、家族などがエンディングノートの存在を知らなければ探してもらえませんん。
信頼の置ける数人に保管場所を教えておきましょう。
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