公正証書遺言

遺言

公正証書遺言について詳しく解説します。

1. 公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証役場で、公証人(法律の専門家である公務員)が、遺言者の口述に基づいて作成する遺言書です。証人2人以上の立会いのもとで作成され、原本は公証役場で保管されます。

2. 作成上の注意点

公正証書遺言は、専門家である公証人が作成するため、自筆証書遺言のような形式不備で無効になるリスクはほとんどありませんが、作成にあたっては以下の点を準備・注意する必要があります。

  • 必要書類の準備:
    • 遺言者の実印と印鑑登録証明書
    • 遺言者と相続人全員の関係がわかる戸籍謄本
    • 遺産を相続させる人(受遺者)の住民票
    • 遺産に関する資料(不動産の登記事項証明書、預金通帳のコピーなど)
    • 証人2名以上の選定と、その人の氏名、住所、生年月日、職業を記載したメモ
  • 証人の選定:
    • 証人には、遺言者の推定相続人やその配偶者、直系血族、未成年者、公証人の配偶者、四親等内の親族など、法律上、証人になれない人が定められています。
    • 通常は、公証役場が信頼できる人を手配してくれる場合が多いです。
  • 遺言内容の決定:
    • 遺言で何を誰に、どのように相続させるのかを具体的に決めておく必要があります。公証人との事前打ち合わせで内容を固めます。
  • 作成の手順:
    1. 公証役場との事前相談・打ち合わせ: 公証役場に連絡し、遺言書の原案や必要書類について相談します。
    2. 作成当日の手続き:
      • 遺言者と証人2名以上が公証役場に出向きます。
      • 遺言者が公証人に対し、遺言の内容を口頭で伝えます。
      • 公証人がその内容を筆記し、遺言書を作成します。
      • 公証人が作成した遺言書を、遺言者と証人2名に読み聞かせるか、閲覧させます。
      • 記載内容に間違いがないことを確認し、遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・押印します。

3. メリットとデメリット

メリットデメリット
公正証書遺言・方式不備で無効になるリスクが低い ・公証役場で原本が保管されるため、紛失、隠匿、改ざんのリスクがない ・家庭裁判所の検認手続きが不要 ・専門家(公証人)が関与するため、法的トラブルを回避しやすい ・遺言執行者も指定できる・作成に費用と手間がかかる(遺産総額に応じて手数料が変わる) ・2人以上の証人が必要 ・遺言の内容が秘密にできない(証人や公証人に知られる) ・公証役場に出向く必要がある(病気などの場合は、出張してもらうことも可能)
自筆証書遺言・手軽に作成でき、費用がかからない ・内容を秘密にできる ・いつでも、どこでも書き直しが可能・方式に不備があると無効になるリスクがある ・紛失、隠匿、改ざんのリスクがある ・家庭裁判所の検認手続きが必要(※法務局保管制度を利用しない場合)

4. その他知っておくべきこと

  • 検認手続きが不要: 公正証書遺言は、公証人が作成した公的な書面であるため、相続が開始された後、家庭裁判所の検認手続きが不要です。これにより、相続手続きをスムーズに進めることができます。
  • 謄本の交付: 公正証書遺言の作成後、遺言者には正本と謄本が交付されます。原本は公証役場で20年間(場合によっては無期限)保管されます。
  • 費用: 公正証書遺言の作成費用は、相続させる財産の価額によって異なります。また、証人を公証役場に手配してもらう場合は別途費用がかかります。
  • 出張作成: 遺言者が病気などで公証役場に出向くことが難しい場合、公証人に自宅や病院などに出張してもらって作成することも可能です。

公正証書遺言は、費用と手間はかかりますが、遺言の確実性と安全性が非常に高いという大きなメリットがあります。特に、財産が多岐にわたる場合や、相続人同士のトラブルが予想される場合などには、公正証書遺言の作成を検討されることをお勧めします。


遺言については、素人判断をしないことが重要です。遺言についての専門家は、司法書士、弁護士です。複雑なケースでは、少々お金がかかっても専門家の助力を得た方がよいでしょう。