遺族年金とは？（まず知っていただきたいこと）
遺族年金には、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金から支給される遺族厚生年金の2種類があります。
- 遺族基礎年金
- 亡くなった方に「生計を維持されていた子がいる配偶者」または「子」に支給されます。
- 子（18歳到達年度の末日までの方、または1級・2級の障害を持つ20歳未満の方）がいらっしゃらない場合、遺族基礎年金は受給できません。
- 遺族厚生年金
- 亡くなった方によって生計を維持されていた遺族（配偶者、子、父母、孫、祖父母など）のうち、最も優先順位の高い方に支給されます。
- 老齢厚生年金を受給されていた夫が亡くなった場合、妻は原則としてこの遺族厚生年金の対象になります（※妻の収入などに要件があります）。
- 子がいなくても受給対象です。
※収入条件について
収入が多い人は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取ることができません。具体的には、年８５０万円以上の収入または年６５５万５千円以上の所得があれば支給されません。「遺族年金には収入条件がある」という部分を早飲み込みして、働いていればもらえないと勘違いする人もいるそうです。収入条件が適用されるのは、相当な高収入がある人だけです。もらい損ねないようにしましょう。
中高齢寡婦加算について
妻が40歳から65歳になるまでの間で遺族厚生年金を受給する場合、中高齢寡婦加算が加算される制度がありますが、妻がすでに老齢基礎年金を受給されている場合は、原則として対象外です。
65歳以上の妻と遺族厚生年金（年金の併給調整）
現在、妻が老齢基礎年金を受給されている場合（６５歳以上）、遺族厚生年金を受け取る際には、ご自身の老齢年金との併給調整が行われます。
- 妻の老齢基礎年金：全額支給されます。
- 遺族厚生年金：原則として、ご自身の老齢厚生年金がない妻の場合、亡くなった夫の老齢厚生年金（報酬比例部分）の4分の3が遺族厚生年金の基本額となりますが、妻の年齢や妻自身の老齢厚生年金の受給権の有無によって、支給額の計算方法が変わります。
- ポイント： 自身の老齢厚生年金と夫の遺族厚生年金の両方を受け取る権利がある場合、自身の老齢厚生年金を優先し、遺族厚生年金は調整された額（夫の年金の一部）が支給されることになります。
遺族年金の手続き（請求の流れ）
遺族年金は、請求しなければ支給されません。 以下のステップで手続きを進めます。
1. 未支給年金の請求
夫が亡くなられた後、まだ受け取っていない年金（死亡月分まで）がある場合、未支給年金として受け取ることができます。
- 手続き時期: 死亡後すぐ
- 請求先: お近くの年金事務所または街角の年金相談センター
2. 死亡届と年金受給権者死亡届の提出
- 死亡届: 市区町村役場に提出します（通常、死亡から7日以内）。
- 年金受給権者死亡届（報告書）: 日本年金機構に提出します。マイナンバーが年金情報と結びついている場合は提出が原則不要ですが、念のため確認しましょう。
3. 遺族年金の請求
- 請求先: 亡くなった夫の最後の加入年金制度によって異なりますが、老齢厚生年金を受給されていた場合は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターが窓口になります。
- 時効: 年金を受給する権利が発生した日（原則として夫の死亡日の翌日）から5年で時効となります。お早めの手続きをお勧めします。
4. 主な必要書類
遺族年金（遺族基礎年金・遺族厚生年金）の新規の請求手続きについては、現時点（2025年10月）では、遺族年金の新規の請求手続きを電子申請で行うことはできません。原則として窓口での手続き（年金事務所、街角の年金相談センターまたは市区町村役場）が必要です。
一般的に必要となる書類は以下の通りですが、個別の状況によって追加で必要となる書類があります。事前に年金事務所に電話などで確認されることをお勧めします。
| 書類名 | 取得先・備考 |
| 年金請求書 | 年金事務所の窓口にあります。 |
| 戸籍謄本 | 市区町村役場。死亡日以降に作成されたものが必要です。 |
| 世帯全員の住民票 | 市区町村役場。死亡日以降に作成されたもので、続柄等が記載されたもの。 |
| 夫の住民票の除票 | 市区町村役場。 |
| 請求者（妻）の所得証明書 | 市区町村役場。生計維持の要件確認のため。 |
| 死亡診断書（死体検案書）のコピー または 死亡届の記載事項証明書 | 病院・市区町村役場。 |
| 受取先の金融機関の通帳（妻名義） | 振込先口座確認のため。 |
| 基礎年金番号が確認できる書類 | 亡くなった方と妻のもの（年金手帳など）。 |
| その他 | 請求者の健康保険証、契約書など（生計同一を確認するため）。 |
順調にいけば、年金請求からおおよそ６０日後に、日本年金機構から「年金証書・年金決定通知書」が送付されます。その後、おおよそ５０日後に「年金振込通知書」「年金支払通知書」が送付されて入金されます。
以上のように、遺族年金の請求から受給までは約４ヶ月かかると言われています。書類不備などがあるとさらに時間がかかることがあります。
まず最初にしていただきたいこと
まずは、以下の窓口に電話でご相談されることをお勧めします。
- 日本年金機構（お近くの年金事務所または街角の年金相談センター）
- 「夫が亡くなったので、遺族年金の手続きについて相談したい」と伝え、ご自身の年金受給状況（老齢基礎年金のみ）と夫の年金受給状況（老齢厚生年金）を伝えてください。
- これにより、必要な書類や手続きについて、具体的な案内を受けることができます。
年金の手続きは若干分かりにくいです。まずネットなどで基本的なことを調べたら、まず相談のために一度年金事務所か市区町村役場に行き、次に手続きのために行くという二段階で考えた方がよいでしょう。二度手間をいとわない方が早道になるものです。
