若い頃、会社にコンピュータが導入されたとき、会社ではその方面に知識がある人がいなかったので、全部外注に出していました。私も一応担当者の一人になりましたが、コード一行書けるわけではないので社内の要望をまとめて業者の人に伝える程度のことしかできませんでした。
機会があって携わったのだから少しは詳しくなりたいという気持ちがわいてきて、いくらかでも足しになるかもしれないと思って、ビッグローブの個人会員になって雑談風の記事をのせるホームページを作り始めました。
最初はホームページビルダーというソフトを使っていました。ところが、ちょっと手直しすると形が崩れることが多くてストレスをためていました。
そうしたとき、詳しい人から、ソフトでなく自分でコードを書いたほうが思うように作れるというアドバイスをもらいました。そして、「とほほのWWW入門」という入門サイトが良いよと教えてもらいました。そのサイトは、とてもわかりやすくHTMLを説明していたので、読んで試しているうちにすっかりはまってしまって、ホームページ作りが楽しくなりました。CSSもこのサイトで学びました。
その後仕事が忙しくなってホームページ作りを中断しましたが、10何年か経って、残業が少ない部署に移動したことをきっかけに復活させました。今度は、ビッグローブのサービスではなく、レンタルサーバーを借りてワードプレスで作りました。ワードプレスはCSSやHTMLを知らなくてもできますが、知っているとやれることの幅が広がります。
最初は勉強になるかと思ってやったことですが、今は特に目的がないので、ほぼ惰性で続けているような感じです。なにか主張があってやっているのではありません。ボケ防止効果はあると思っています。作業として楽しいので、趣味になってしまったのかもしれません。
夏目漱石の「吾輩は猫である」の一節に、猫の主人である珍野苦沙弥氏が日記を書いている場面があります。猫はそれをみてこう思います。「主人のように裏表のある人間は日記でも書いて世間に出されない自己の面目を暗室内に発揮する必要があるかも知れないが、我等猫属に至ると行住坐臥、行屎走尿ことごとく真正の日記であるから、別段そんな面倒な手数をして、己の真面目を保存するには及ばぬと思う。」とあります。
日記の効用は、「世間に出されない自己の面目を暗室内に発揮する」ことだというのです。まさに匿名でするブログのことではないでしょうか。私の場合、「世間に出されない自己の面目」というほどのものはもっていないつもりですが、ブログの効用というのは煎じ詰めればそんなところだと思います。
兼好法師は、「つれづれなるまゝに、日くらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ」と書きました。とめもないことを、あてもなく書きつけてたということらしいです。この場合、わかってほしい特定の相手があるわけでなく、何を訴えようとする特定の目的があるわけでなく、ただ書くということがすばらしいと言っているように思います。
兼好法師の文は後世に残ってしまいましたが、私が死ねば、Xサーバーへの支払いがとまり、まもなくすると閉鎖されてしまうでしょう。それで良いしそうでなければならないと思っています。いつまでも残るほうが気色悪いと思います。