読書記録 日本の国宝、最初はこんな色だった 小林泰三著 光文社新書 2008年10月20日
私が仏像にもっているイメージは、いかにも年代を経た、くすんだたたずまいだ。
以前、あるテレビ番組で東南アジアのどこかのお寺の金ピカ仏像を見たときは、あれはキンを好むお国柄のせいだろう、日本ではありえないと思っていた。ところが、この本によれば、日本の仏像も作られたときには金ピカだったというのだ。
第1章では奈良の大仏殿を再現している。黄金に輝く大仏、極彩色の四天王、それらを見ているうちに、この金ピカの方が本物らしく見えてきた。
色がくすんだ、塗りがはげたということは損傷したということである。損傷してきた仏像を見た関係者は残念なことだと考えて修理修復したいと考えたはずだ。それが自然な気持ちだと私には思える。
ところが修理修復されなかった。ということは直したくても直せない事情があったのだろう。お金が足りない、修復の技術がない、信仰心が薄れてきたなど。ともかく傷んだままに放置された。
そうしているうちに年月を経て、以前のきらびやかな姿を知っている人が誰もいなくなったころ、始めからくすんだ色合いしか知らない人々は、そのくすんだ姿を当然のものとして受け入れるようになった。さらには、むしろきらびやかなものは安っぽく見えるように意識が変わってしまったのではないかと想像がふくらむ。
ともあれ、著者は国宝が製作された当時の姿を見せてくれた。傷んだところを修復して、元の色を探し出して鮮やかに復元された作品は本当に美しい。あれなら感動したはずだ。もちろん今のくすんだ姿も美しいのだが、元の姿をデジタル復元で見れたことで更に味わいが深まった。今の姿と当時の姿の両方見える時代になったのはすばらしいことだと思う。
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