2024年11月14日

日記

このたび、「漱石の長襦袢」なる書を拝読仕った。筆の主は半藤末利子殿、文春文庫より出されしものにて候。

さて、この御方は、文豪夏目漱石翁の孫娘にあたらるる方にて、漱石翁の長女・筆子女史の第四女とのこと。されば漱石翁の直系の血をひかれし御方なり。

もっとも、末利子殿は漱石翁の薨去の後に生まれられたゆえ、翁についての話は、もっぱら御母堂・筆子女史より聞き書きされたとの由。

書名にある「長襦袢」とは、漱石翁がお召しなされた実物のことで、それが末利子殿より「漱石山房記念館」なるところに寄贈され、今も所蔵されておるとのこと。

拙者、着物については不案内にて、襦袢と申せば下着とばかり思うておった。しかしこの書にて、肌襦袢が肌に直接触れるものであり、長襦袢とはその上に着し、着物の直下にまとうものなりと知り申した。

この長襦袢、衿や袖口が着物の間よりのぞくゆえ、洒落者どもはこれにこだわるとか。なるほど、着流しの道にも奥深き趣があるものにて候。漱石翁の長襦袢、写真にて拝見するに、なかなかに派手やかな模様にて、女物と誤解されたこともあったそうな。されど、実際にはれっきとした男物とのこと。

さて、末利子殿は、漱石翁の門下に連なる文士たちに対して、いささか辛口にあらせらるる。どうやら、漱石夫人・鏡子様とその門弟たちとの間には、深き確執があったように聞こえてくる。そのような背景が、筆致にも表れておるのやもしれぬ。

もっとも、漱石家の方々と門下の先生方とのあいだ、果たしてどちらが正しきや、拙者にはなんとも申し上げられぬことでござる。


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