2024年11月25日

日記

高血圧と申されしは、拙者が四十の頃でござった。
年に一度の健診の結果に、「高血圧 要治療」とあり、さすがに見過ごすわけにもいかず、近所の内科へ足を運び申した。

看護師殿にて血圧を測り、その後、医師の申すには「ああ、高いですね」「薬、出しておきますから」――以上。
このやり取りのあまりに素っ気なきこと、正直、拙者の心には少なからず失望が残った。

されば、薬が一袋終わったところで、そこへの通院をやめにいたした。
ところがその後、薬を服用しておらぬのに、次の健診では血圧は正常値。以降、十年ほど、引っかかることもなかった。

五十の声を聞いた頃、再び健診にて「要治療」の文字が現れ、今度は別の医者の門を叩くこととした。
この医師は、前の者と違い「このくらいであれば、まず薬を使わず様子を見ましょう」と申され、「試しに葛根湯を出しておきます」とのこと。

風邪のときに飲むものと思うておった葛根湯が血圧に効くとは、にわかには信じがたかったが、しばらく服すると、なんと血圧が元に戻った。
それからというもの、拙者は毎朝自ら血圧を測るようになった。

幾年かが過ぎ、またしても高めの数字が出るようになった。
しかし、葛根湯の先生の医院は、すでに廃業されていた。仕方なく、別の医者に診ていただくこととなった。

その先生は「少し高いですね、どうしますか?」と拙者に問う。
ならばと拙者、「では薬を」と申せば、「では出しましょう」となった。
さらには、「血圧が落ち着けば、薬はやめても構いません」とのお言葉をいただいた。

これには拙者、少なからず驚いた。
友らの間では「一度薬を始めたら、医者はなかなかやめさせてはくれぬ」と聞いておったゆえ、拍子抜けしたのも事実である。

このときも、薬を一週間ほど服すれば、血圧は平常値へと戻った。
それが、今に至るまで、拙者の最後の高血圧通院にござる。

その後は実に安定し、特に職を退いてからは、まるで別人のように落ち着いておる。
むしろ今では、低血圧の気味すらある。

思えば、かつての「高血圧」も、本当に高血圧であったのか、疑いの念が湧かぬでもない。
あれは、心のどこかに張りつめたものがあり、いわゆるストレスによる一過性のものだったのではあるまいか。それでも高血圧に違いないが。


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