拙者、もとより「成すべきことはすぐに成すべし」との心得にて、これまで心がけて参り申した。
されど、ある程度年を重ねしのちには、いかに些細に見ゆる事柄とて、あえて急がず後回しにすることも増え申した。
拙速にて失敗を重ねし経験より、まずは一度間を置き、冷静に思案するほうが道理に適うと悟りしからにござる。
時を置けば、心静まり、あれこれと多方面より考え直すこともでき、時には新たなる妙案の浮かぶこともござるゆえ。
されど、齢をとりてよりは、この策にも弱きところが露わとなり申した。
「後ほど」と思うたこと、そのまま忘れ去ることが多くなりしゆえにござる。
記憶というもの、確かに衰えを隠せぬものと痛感いたし候。
ゆえに、やむなく用事は書き留めておく「とぅーどぅー」とやらの帳面に認めておったものの、
隠居して用の少なくなりし後は、その帳面すら覗かぬ日が続き、結局どうにもならぬ始末。
そこで近頃は、成すべきことはすべて、正方形の付箋に書き留め、目の前に貼り置くことと致し申した。
たとえ今すぐ成すべきこととて、まずはその付箋に書き付ける。
誰かより文を受け取り、すぐに返答をせんとする時も、先に「誰それに文を返す」と書きて、机のそばに貼り申す。
かようにすれば、たとえ途中で席を外すことあっても忘れぬにて候。
なお、付箋の剥がれ落ち、屑籠に沈みしこともあったゆえ、近頃は強き粘りを持つ付箋を用いておるところにござる。
2024年12月2日ーこのページー2024年12月4日