小原庄助殿は、なにゆえ身上を潰したかと申せば、
朝寝、朝酒、朝湯を殊のほか好み、その果てに家産を傾け申したとな。
拙者も若き折――と申しても四十のころにて候えども――
休日にはゆるりと構えたく思い、小原庄助殿に倣うて朝酒を試み申した。
さぞ快く、心安らぐものと存じたれど、いざ呑んでみればさほどの趣もなし。
むしろ心落ち着かず、そわそわといたした。
時移りて、今は仕事もなく、車の操もやめ、
おのが身一つ、のんびり朝酒を楽しむにふさわしき身分となり申したが、
その肝心の酒をやめて幾星霜、もはや再び呑もうとも思わぬ次第にござる。
また、朝寝もままならず。
現役の頃は六時に起き申した。
今は隠居の身にて、寝ておっても咎める者とておらぬのに、
やはり六時には目覚め申す。
下手をいたせば、なお早く目が覚める有様にて、
まこと人の習いとはおかしきものにござるな。
2024年12月11日ーこのページー2024年12月13日