『椿井文書 ― 日本最大級の偽文書』と申す書を読み申した。馬部隆弘殿の著にて、中公新書より出でたるものにござる。
椿井文書とは、江戸の末期に生きた国学者、椿井政隆という者が記した文書のことにて候。これがなんと偽文書であったとは驚き入り申した。
その内容は、地図や絵図、神社の縁起、史跡の由緒、家系図など多岐にわたり、数百点にも及ぶという。偽文書自体は珍しからぬものなれど、この椿井文書はあまりに巧妙にして、専門家すら欺かれ、いまだに市町村史などの史料として引用されておる例も少なくないとの由、大いに驚かされ候。
この書は、歴史学者馬部殿が、その椿井文書の全貌を分かりやすく説き起こしたるものにて候。偽書と明言するは、これまでそれを用いてきた人々からの反発もあろうに、あえて世に問うた勇気、まこと大したものと感じ入り申す。
また拙者は、その偽書を編んだ椿井政隆という人物にも不思議と惹かれるものがござる。偽物をでっち上ぐるにせよ、本物に比肩するほどの才覚が必要にてあろう。文章の力、絵を描く技、根気、そして人を納得させる説得の術。いずれも並の者には真似できぬことにて、まるで一種の超人的才覚を備えた者のように思えてならぬ。
さて、今日は大雪注意報が出ており、明朝にかけては警報級の大雪になるやもしれぬとの由。どう転ぶやら、油断なり申さぬ。
2025年1月14日ーこのページー2025年1月16日