先日、バスに乗ろうとした折のこと。
拙者の前に並んでおった御仁が、入口の段差に足を取られ、つまずいて倒れ込み申した。
「これは痛かろうな……」と胸中に思い、「大丈夫でござるか」と声をかけたのじゃが――
これは愚問にてござった。
「大丈夫か」と問われれば、大概の者は「大丈夫にござる」と答えるもの。今回もまた、まさにその通り。
件の御仁も、席に腰を下ろされた後、黙って脚を撫でておられた。きっと痛みを堪えておられたのでござろう。
それを見て、拙者もかつての出来事を思い出し申した。
数十年も前のことでござるが、空の旅へ向かう途中、空港の連絡バスに乗ろうとした折、疲労のせいか足が十分に上がらず、段にてつまずき、向こう脛をしたたかにぶつけたことがあった。
かようなことを繰り返せば、下手をすれば骨が折れ、入院の身ともなりかねぬ。ゆえに、これより先は、バスに乗り込む際は、漫然と足を運ぶことなく、しっかと段を見据え、しっかと足を上げて乗り込むこと――その教えを胸に刻み申した。
さて、今朝方は、わずかに雪が降っておったが、ほどなく止み、静かな一日となり申した。
2025年2月26日ーこのページー2025年2月28日