拙者が初めて花粉なるものに悩まされ申したのは、二十代の初め、かれこれ五十年以上の付き合いとなり申すな。
ある秋の佳き日、天気も良うて、山道を歩いておった。やぶをかき分けて進んでおるうちに、突如としてくしゃみが止まらぬようになり申した。
道連れの者に「これは風邪かの」と申したところ、「いやいや、風邪ではなかろう。よう分からぬが、違う気がする」と言われ申した。
翌日、近くの町医者、耳鼻科に参ったところ、「これはアレルギーと申すものに候」と。されど、薬のたぐいは出されず、鼻を水で清められたのみ。何度か通院いたしたものの、治る気配も見えず、こは無益と見て足を運ぶのをやめ申した。
この時は、ひと月ほど経った折に、気づけば自然と治まりおった。
されど翌年また同じ症状に見舞われ、幾年か後には、春にも起こるようになり申した。検査などはいたさなんだゆえ、確たることは分かりませぬが、秋は何某(なにがし)かの雑草、春は杉や檜(ひのき)によるものと思われ申す。
春秋の折には、しばしば鼻をかんでおったゆえ、勤め先にては「風邪をひきやすい体質」と見られておったように候。
さて、昨日よりの雨が、今朝には霙(みぞれ)へと姿を変え、降ったり止んだりの一日でござった。