今朝方、電車に揺られておるときのことでござった。ふと目をやれば、正面に座る御仁が拙者と同じ模様の草履――いや、現代風に申せば「靴」を履いておられた。
「おお、珍しきこともあるものよ」と一瞬思うたが、すぐに気が付いた。何のことはない、近ごろ拙者はもっぱら“ワークマン”なる商い処の品に信を置いておるゆえ、同じ草履(靴)を履く者がいても不思議ではないのでござった。
むしろ、今まで出会わなかったことのほうが、怪しきほどであったかもしれませぬ。
そこで少し考えてみたのじゃが――たぶん、居たのに気が付かなんだだけであろうと。そもそも拙者、電車の中ではしばしば心ここにあらず。目は開いていても見ておらず、知った顔がすぐそばに居ても気付かぬことさえある始末。
まして足元など、なおさらでござろう。
さて、本日は久方ぶりの晴天。空は澄み、日差しはやわらかく、まことに心洗われる陽気にござった。