2025年6月23日 月曜日

日記

先だって、NHKの『こころ旅』なる番組にて、女優の田中美佐子殿が、岩手県奥州市の人首町(ひとかべちょう)を訪ねられた巻、何とはなしに見入っておった。

思えば遥か昔のこと――拙者が馬車ならぬ車を操って、水沢江刺の方面を巡っていた折、「人首」と書かれた地名が目に入り、いささか気になって車を停め、あたりをぶらりと歩いてみたのだ。

たまたまそこを歩いておられたご老体に、「恐れ入りますが、この地名、いかに読むものでござろう」と尋ねたところ、「ひとかべと申す」と穏やかに教えてくださった。そして、こう続けられた――「このあたりは昔、蝦夷の大将にて人首丸(ひとかべまる)なる者がおった土地にてな」と。

なるほど、昔は蝦夷との境目はこの辺りであったかと思いつつ、そのまま旅の道を先を急いだゆえ、ほんの束の間の逗留にすぎなかったが、今回の放送を観て、「おお、あのときの地であったか」と、忽ち記憶の扉が開いたのであった。

画面に映った町のたたずまいが、あの折に見た風景と重なり、「そうそう、こういう町であった」と、懐かしさ胸に満ちてまいった。まこと、旅というもの、長き滞在をせずとも、心に残ることがあるものじゃな。

本日は好日なれど、西の方では大雨との報もあるとか。世の中は広く、天の気まぐれもまたそれぞれ。こうして静かに過ごせる日々をありがたく思うばかりにて候。


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