昨夜のこと――予報にては何の前触れもなかったにもかかわらず、突如として雷鳴が轟き、眠りの中より目覚め申した。普段ならば、多少の物音ごときでは目覚めぬ拙者なれど、雷となれば話は別。身を起こすこともなく、ただ布団の中にて、過ぎ去るのをじっと待つのみでござった。
その間、ふと幼き頃の夜の音が、心に浮かんでまいった。
まず思い出されたは、海の音。海が近かった故、穏やかな晩には、小さき波が寄せては引き、繰り返すその調べに、心が安らぎ眠りへと誘われたものじゃ。されど、ひとたび海が荒れれば、その響きはまさに雷鳴に劣らず、家が揺れるかとばかりの音となり、寝つかれぬ夜もしばしばありき。
もう一つ思い出されたは、近くにありし精米所の音。構造こそ知らねど、「トントン」「ドンドン」と、どこか人の手仕事を思わせるような音が、夜通し続いておった。これが悩ましくて、拙者はよく愚痴を申しておったが、親からは「年がら年中のことじゃなし、向こうも生活がかかっておる」と諭されたものじゃ。今思えば、それもまた、暮らしの一風景にござった。
さて、今日は雨がちの日和にて、外を歩くには不自由であったが、雨の合間には窓から涼やかな風が差し入り、肌に心地よいひとときがあった。久方ぶりの感触にて、ようやく季節が一歩進んだかと思うた。
