2025年10月3日の日記 衣桁

日記

拙宅には古きものは多くはござらぬが、衣桁(いこう)が一基ある。

衣桁とは、着物を懸けておくための、鳥居の如き形をした調度品でござるな。一枚にて立ちたる衝立式と、中央の蝶番にて二枚に折り畳む屏風式がある由。拙者が持つは、この屏風式で候。

黒き塗り物にて、元は絵模様が描かれておったと見え、今も薄くその跡を留めておる。明治の頃より、わが家に伝わりしと聞くが、あるいは大正の頃のものかもしれぬ、真偽は定かではござらぬ。

昔は寝所にて、布団を囲むように置き、脱ぎし着物を懸けておけば、隙間風を防ぐに重宝であったという。今の拙者の部屋には隙間風は吹かぬが、冬は窓際の冷え込みが厳しきゆえ、この衣桁にバスタオルを懸け、窓と寝台の間に立てると、誠に違うものでござる。

この衣桁、以前実家を片付けし折、捨て去られる方に振り分けられておったが、何としたことか、これは捨てたくないという心持ちが湧き起こり、持ち帰りしものにござる。夏場は置き場所に難儀いたすが、これからの季節はまことに重宝いたす。

本日も晴れの一日にて候。


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