制度の概要
介護保険における「福祉用具貸与(たいよ)」は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送るために、必要な福祉用具をレンタル(貸与)するサービスです。
① 支給対象者
- 要支援1・2 または 要介護1~5 の認定を受けている方。
- 在宅で生活している方が対象です。
② 利用者負担
- 原則として、レンタル料金の1割を自己負担します。
- ただし、一定以上の所得がある方は2割または3割負担となります。
- 福祉用具貸与の費用は、利用者が直接指定事業者へ自己負担分を支払い、残りの保険給付分(7~9割)は市町村から事業者へ支払われます。
③ 支給限度額(月額)
- 福祉用具のレンタル費用は、居宅サービス全体の「区分支給限度額」に含まれます。
- 区分支給限度額は要介護度ごとに月ごとに定められており、レンタル料の合計額がこの限度額を超えた場合、超過分は全額自己負担となります。
- 例:介護サービス(訪問介護、デイサービスなど)と福祉用具レンタルを合わせて、限度額内に収まるようにケアプランを作成します。
④ レンタルの原則
- 福祉用具は、利用者の身体状況の変化や用具の機能向上に対応するため、レンタル(貸与)で提供されます。
- 一方、入浴や排泄に使うような衛生面や再利用に抵抗があるものは、「特定福祉用具」として購入の対象となります。(別の制度です。)
貸与の対象となる福祉用具(13品目)
介護保険でレンタルできる福祉用具は、以下の13品目です。ただし、要介護度によってレンタルできる品目が異なります。
品目 | 概要 | 要介護度による利用制限(原則) |
車いす | 自走式、介助式、電動車いすなど | 要介護2~5(要支援・要介護1は原則対象外*) |
車いす付属品 | クッション、電動補助装置など | 要介護2~5(要支援・要介護1は原則対象外*) |
特殊寝台 | 介護用ベッド(背上げ・高さ調節機能付きなど) | 要介護2~5(要支援・要介護1は原則対象外*) |
特殊寝台付属品 | マットレス、サイドレール、介助用バーなど | 要介護2~5(要支援・要介護1は原則対象外*) |
床ずれ防止用具 | エアマット、ウォーターマットなど | 要介護2~5(要支援・要介護1は原則対象外*) |
体位変換器 | 体位の変換を容易にする用具(体位保持のみのものは除く) | 要介護2~5(要支援・要介護1は原則対象外*) |
手すり | 工事を伴わないもの(置き型など) | 要支援1~要介護5(全介護度で利用可) |
スロープ | 段差解消のためのもので、工事を伴わないもの(置き型など) | 要支援1~要介護5(全介護度で利用可) |
歩行器 | 移動時に体重を支える構造を有するもの | 要支援1~要介護5(全介護度で利用可) |
歩行補助つえ | 松葉杖、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、多点杖など | 要支援1~要介護5(全介護度で利用可) |
移動用リフト | 立ち上がりや移乗を補助するリフト(つり具を除く) | 要介護2~5(要支援・要介護1は原則対象外*) |
徘徊感知機器 | 認知症の方の徘徊を感知し、家族や介護者に知らせる機器 | 要介護2~5(要支援・要介護1は原則対象外*) |
自動排泄処理装置 | 尿や便を自動で吸引する装置(交換可能部品を除く) | 要介護4・5(要支援~要介護3は原則対象外*) |
*「例外給付」について
要支援1・2、要介護1などの「軽度者」については、上記の表で原則対象外となっている品目でも、身体の状況等から特に必要と認められる場合に限り、保険給付の対象となることがあります。この例外的な給付を受けるためには、医師の意見書などに基づいた市区町村への申請が必要です。
利用手続きの流れ
- ケアマネジャーに相談
- 担当のケアマネジャー(要支援者は地域包括支援センター)に、必要な福祉用具について相談します。
- 福祉用具貸与事業者の選定
- 都道府県の指定を受けた「福祉用具貸与事業者」を選びます。
- 福祉用具サービス計画の作成
- ケアマネジャーと事業所の福祉用具専門相談員が連携し、利用者の身体状況、生活環境、目標に基づいて、適切な福祉用具を選定し、「福祉用具サービス計画」を作成します。
- 契約と納品
- 利用者と事業者がレンタル契約を結び、福祉用具が納品・設置されます。
- サービスの利用開始
- 利用者は毎月、レンタル料金の自己負担分(1~3割)を事業者に支払います。
- 事業所は定期的に訪問し、用具の点検・調整や、利用状況の確認を行います。