制度の概要と支給限度額
介護保険では、入浴や排泄などに使う「貸与になじまない(レンタルに適さない)特定の福祉用具」について、購入費用の一部を支給する制度があります。
これは「特定福祉用具販売費の支給」と呼ばれ、レンタルとは別の費用枠で利用できます。
以下に、制度の詳細、対象品目、手続きの流れをご説明します。
① 支給対象者
- 要支援1・2 または 要介護1~5 の認定を受けている方(原則として在宅の方)。
② 支給限度額
- 一人あたり、同一年度(4月1日~翌年3月31日)で10万円(税込)が上限です。
- この10万円を上限として、購入費用の7割~9割が介護保険から支給されます。
- 自己負担は所得に応じて1割、2割、または3割です。
- 例: 購入費用が5万円の場合(1割負担の方):
- 支給額:4万5千円(9割)
- 自己負担額:5千円(1割)
③ 購入の原則
- 支給の対象となるのは、都道府県が指定した「特定福祉用具販売事業者」から購入した場合に限られます。指定を受けていない事業者や通信販売等での購入は対象外です。
- 同一種目の福祉用具は原則として1回のみの支給です。ただし、用途や機能が著しく異なる場合や、破損した場合、要介護度が著しく重くなった場合は再度購入が認められることがあります。
支給対象となる特定福祉用具(9品目)
以下の福祉用具は、再利用が困難であったり、個人の衛生管理上レンタルの利用に心理的抵抗があるため、「特定福祉用具」として購入費用が支給されます。
品目 | 具体的な用具の例 |
腰掛便座 | ポータブルトイレ、和式便器の上に置いて使う便座、洋式便器に置いて高さを補う便座(補高便座)など。 |
入浴補助用具 | 入浴用いす(シャワーチェア)、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台(バスボード)、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルトなど。 |
簡易浴槽 | 空気式または折りたたみ式などで、工事不要で簡単に設置・移動できる浴槽。 |
移動用リフトのつり具の部分 | 移動用リフト(本体はレンタル対象)に用いる、利用者の体に直接触れるつり具(ベルトやシート)の部分。 |
自動排泄処理装置の交換可能部分 | レシーバーやチューブなど、肌に直接触れる排泄処理装置の部品。 |
排泄予測支援機器 | 排泄のタイミングを予測し通知する機器。(令和4年4月から追加) |
(固定用)スロープ | 屋内の敷居などの小さな段差に設置する、持ち運びが目的でないスロープ。(一部の品目はレンタルと購入の選択制になりました。詳細はケアマネジャーにご確認ください。) |
歩行器 | 4点杖や多点杖、固定式・交互式歩行器など。(一部の品目はレンタルと購入の選択制になりました。) |
歩行補助つえ | ロフストランドクラッチ、カナディアンクラッチ、多点杖など。(松葉杖は対象外。一部の品目はレンタルと購入の選択制になりました。) |
申請から支給までの流れ
住宅改修とは異なり、原則として購入後に申請(償還払い)を行いますが、購入前の相談と計画が必要です。
- ケアマネジャーに相談(最重要)
- 必ず購入前に、担当のケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談し、用具の必要性や選定について助言を受けます。
- ケアプランまたは「特定福祉用具販売計画」を作成してもらう必要があります。
- 指定事業者からの購入
- 指定を受けた販売事業者から福祉用具を購入します。
- 費用の支払いと領収書の受領
- 【償還払いの場合が原則】 一旦、購入費用の全額(10割)を事業者に支払います。
- 領収書は、被保険者本人の氏名宛で、品目名や金額が明記されたものを受け取ります。
- 支給申請
- 市区町村の介護保険担当窓口に、以下の書類を提出します。
- 福祉用具購入費支給申請書
- 領収書(原本)
- 福祉用具のパンフレット(製品情報がわかるもの)
- 居宅サービス計画または特定福祉用具販売計画の写し
- 委任状(給付金の振込口座が本人名義でない場合など)
- 市区町村の介護保険担当窓口に、以下の書類を提出します。
- 支給決定
- 審査を経て、自己負担分を除いた金額(7割~9割)が、申請者(または指定口座)に振り込まれます。
※受領委任払いについて
一部の市区町村では、利用者が自己負担分(1~3割)のみを事業者に支払い、残りの保険給付分を市町村から事業者に直接支払う「受領委任払い」が利用できる場合があります。一時的な費用負担を抑えられるため、お住まいの自治体にご確認ください。