介護保険における住宅改修費の支給制度は、要介護・要支援認定を受けた方が、自宅でより安全に、自立した生活を送るために必要な小規模な改修を行った際に、その費用の一部を支給するものです。
制度の概要
制度の概要、対象となる工事、手続きの流れについて詳しくご説明します。
支給対象者
- 要支援1・2 または 要介護1~5 の認定を受けている方(原則として在宅の方)。
- 住民票の住所地にある住宅が対象です。
支給限度額
- 一人あたり生涯で20万円(税込)が上限です。
- この20万円を上限として、改修費用の7割~9割が介護保険から支給されます。自己負担は所得に応じて1割、2割、または3割です。
- 例:改修費用が20万円の場合(1割負担の方):
- 支給額:18万円(9割)
- 自己負担額:2万円(1割)
限度額のリセット
以下の場合は、再度20万円までの支給限度額が設定され、利用できます。
- 転居(引越し)をした場合。
- 要介護状態区分が3段階以上重くなった場合。(例:要介護1
要介護4)
対象となる工事の種類
介護保険の支給対象となるのは、利用者の生活を助けるための小規模な改修に限定されています。
- 手すりの取り付け
- 廊下、階段、玄関、浴室、トイレなどで転倒予防や移動を補助するための手すりの取り付け。
- 手すりの下地補強工事も対象となります。
- 段差の解消
- 居室、廊下、浴室、玄関などの段差を解消するための工事。(敷居を低くする、スロープを設置する、浴室の床をかさ上げするなど)
- 注意: 置き型のスロープや昇降機、リフトの設置は原則対象外です。
- 滑り防止及び移動の円滑化のための床材の変更
- 居室の畳からフローリングやビニール系床材(滑りにくいもの)への変更。
- 浴室の床を滑りにくいものに変更する工事。
- 引き戸等への扉の取替え
- 開き戸を引き戸、折れ戸、アコーディオンカーテンなどに取替える工事。
- ドアノブの変更や戸車の設置なども含まれます。
- 洋式便器等への便器の取替え
- 和式便器から洋式便器への取替え。(利用者が排泄しやすいように便器の向きを変える工事なども含む)
- 上記に付帯して必要となる工事
- 上記の改修を行うために付随して必要となる工事。(例:段差解消に伴う給排水設備工事など)
申請から支給までの流れ
介護保険の住宅改修費支給を受けるには、必ず工事を始める前に市区町村への事前申請と承認が必要です。工事が終わってから申請しても受け付けてもらえません。
ステップ | 内容 | 担当者 |
① 相談 | 担当のケアマネジャー(要支援者は地域包括支援センター)に、住宅改修の必要性を相談します。 | ケアマネジャー |
② 理由書作成・業者選定 | ケアマネジャーに「住宅改修が必要な理由書」を作成してもらいます。同時に、施工業者を選定し、改修内容、見積もり、図面を確定します。 | ケアマネジャー、施工業者 |
③ 事前申請 | 工事着工前に、以下の書類を添えて市区町村の介護保険窓口に提出します。 | 申請者(またはケアマネジャーが代行) |
– 事前申請書 | ||
– 住宅改修が必要な理由書(ケアマネジャー作成) | ||
– 工事費見積書(内訳明細付き) | ||
– 改修前の写真(日付入りが原則) | ||
– 改修後の予定図面 | ||
– 住宅所有者の承諾書(被保険者と所有者が異なる場合) | ||
④ 承認・着工 | 市区町村から承認の通知を受け取ってから、工事をスタートします。(承認前の着工は全額自己負担となります) | 申請者 |
⑤ 費用支払い・事後申請 | 工事完了後、一旦費用の全額を施工業者に支払います。その後、以下の書類を添えて、市区町村に支給を申請します(償還払い方式)。 | 申請者(またはケアマネジャーが代行) |
– 領収書 | ||
– 工事費内訳書 | ||
– 改修後の写真(日付入りが原則) | ||
⑥ 支給決定 | 市区町村の審査を経て、自己負担割合に応じた保険給付分(7割~9割)が指定の口座に振り込まれます。 | 市区町村 |
※償還払いと受領委任払い
多くの市区町村では、一度全額を支払い、後で保険給付分が戻ってくる「償還払い」を原則としていますが、一部の自治体では利用者が自己負担分だけを支払い、残りを市区町村から業者に直接支払う「受領委任払い」も選択できる場合があります。お住まいの市区町村にご確認ください。