介護保険の居宅サービスの種類とケアマネジャーの役割を具体的に解説

介護

介護保険の「居宅サービス」は、要介護認定を受けた方が、自宅で生活を続けながら利用できるサービスの総称です。

居宅サービス全体の仕組み

サービスは、自宅にスタッフが訪問するもの、施設に通うもの、短期間宿泊するものなど、大きく4つのカテゴリーに分けられます。

  • 対象者: 要介護1〜5の認定を受けた方。
  • 利用の流れ: 居宅サービスを利用するには、まず居宅介護支援事業所ケアマネジャーに相談し、利用者の状態や希望に合わせたケアプランを作成してもらう必要があります。
  • 費用負担: サービスの費用は、原則として1割の自己負担です。ただし、所得に応じて2割または3割負担となる場合があります。
  • 支給限度額: 居宅サービスには、要介護度に応じて1ヶ月の支給限度額が設定されています。限度額を超えてサービスを利用した場合は、超過分が全額自己負担となります。

居宅サービスの種類(全13種類)

居宅サービスは、主に以下の4つのカテゴリーに分類されます。

① 訪問系サービス(自宅に来てもらうサービス)

サービス名サービス内容
訪問介護(ホームヘルプ)介護福祉士やヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(入浴・排泄・食事の介助など)や生活援助(掃除・洗濯・調理・買い物など)を行います。
訪問入浴介護介護職員と看護師が自宅を訪問し、持参した浴槽で入浴の介助を行います。寝たきりの方でも安心して入浴できます。
訪問看護看護師や保健師が自宅を訪問し、療養上の世話や医療的なケア(点滴・褥瘡の処置、服薬指導など)を行います。
訪問リハビリテーション理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が自宅を訪問し、日常生活の動作能力向上のためのリハビリテーションを行います。
居宅療養管理指導医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士などが自宅を訪問し、医学的・薬学的な管理や指導を行います。(費用は別途、療養費として計上)

② 通所系サービス(施設に通うサービス)

サービス名サービス内容
通所介護(デイサービス)日帰りで施設に通い、食事、入浴、レクリエーション、機能訓練など、日常生活上の支援や介護を受けます。社会的な孤立の防止にも役立ちます。
通所リハビリテーション(デイケア)医療機関や介護老人保健施設などに日帰りで通い、医師の指示に基づき、理学療法士などによる専門的なリハビリテーションを受けます。

③ 短期入所系サービス(短期間宿泊するサービス/ショートステイ)

サービス名サービス内容
短期入所生活介護介護老人福祉施設(特養)などに短期間宿泊し、食事、入浴などの日常生活上の支援や機能訓練を受けます。(介護者の休息・冠婚葬祭時などに利用)
短期入所療養介護介護老人保健施設(老健)や療養病床などに短期間宿泊し、医療的な管理の下で、介護、看護、機能訓練を受けます。(医療ニーズが高い場合に利用)

④ その他のサービス

サービス名サービス内容
特定施設入居者生活介護有料老人ホーム、軽費老人ホームなどの「特定施設」に入居している方に対し、日常生活上の介護や機能訓練を提供します。
福祉用具貸与車いす、介護ベッド、手すりなどの福祉用具をレンタルできます。(費用は月々の区分支給限度額に含まれます)
特定福祉用具販売入浴補助用具やポータブルトイレなど、貸与になじまない福祉用具を購入する際の費用が支給されます。(年間10万円が上限で、区分支給限度額とは別枠です)
住宅改修費の支給手すりの取り付けや段差解消など、自宅を改修する際にかかる費用の一部が支給されます。(生涯20万円が上限で、区分支給限度額とは別枠です)

居宅介護支援(ケアマネジメント)の重要性

居宅サービスを利用するにあたり、サービスの調整役となるのが「居宅介護支援」です。

  • 居宅介護支援
    • ケアマネジャー(介護支援専門員)が、利用者や家族の希望、心身の状態を考慮し、最適な居宅サービスを組み合わせたケアプランを作成します。
    • 作成されたケアプランに基づいて、各サービス事業者との連絡・調整を行います。
    • このサービスは、利用者負担がありません(全額保険給付)。

居宅サービスを利用するための手続きは、主にケアプラン(居宅サービス計画)の作成が中心となります。

居宅サービスを利用開始するまでの流れは、以下の通りです。

居宅サービス(訪問系サービス)利用開始までのステップ

ステップ1:居宅介護支援事業者の選定と契約

  • 担当するケアマネジャーを見つける: 要介護認定を受けた方は、まず「居宅介護支援事業所」を選び、契約します。ここに所属するケアマネジャー(介護支援専門員)が、今後のサービス利用の窓口となり、サービス利用計画の作成を一手に担います。
  • (要支援1・2の方は「地域包括支援センター」が窓口となり、介護予防ケアプランを作成します。)

ステップ2:アセスメント(課題分析)

  • 状況の聞き取り: 選定したケアマネジャーが自宅を訪問し、利用者ご本人やご家族から、現在の心身の状態、生活環境、どのようなサービスを必要としているか(訪問介護、訪問看護など)、本人の意向などを詳しく聞き取ります。

ステップ3:居宅サービス計画(ケアプラン)の作成

  • 原案の作成: ケアマネジャーは、聞き取った内容に基づき、利用できる訪問系サービスや頻度などを盛り込んだケアプランの原案を作成します。
  • サービス担当者会議: ケアマネジャー、利用者・ご家族、訪問介護事業所や訪問看護ステーションなどのサービス提供事業者が集まり、作成されたケアプランについて、内容が適切か、関係者間で連携が取れるかなどを話し合い、内容を決定します。
  • 利用者による同意: 最終的に、利用者ご本人の同意を得てケアプランが完成します。

ステップ4:サービス提供事業者との契約

  • サービス事業者の決定と契約: ケアプランに記載された訪問介護や訪問看護などのサービスを提供してくれる事業所を選び、それぞれの事業所と個別に利用契約を結びます。

ステップ5:サービスの利用開始

  • 完成したケアプランに基づき、訪問系サービス(ホームヘルパーや看護師など)の利用が始まります。

まとめ

要介護認定後の手続きで最も重要なのは、ケアマネジャーを選任することです。ケアマネジャーがあなたのニーズに合わせた最適な訪問系サービスを選び、手続き全般をサポートしてくれます。

もしケアマネジャーがまだ決まっていない場合は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターに相談して、居宅介護支援事業所のリストをもらうことから始めましょう。