明日はハロウィンとやらで、少し前から、あちこちの商店に、カボチャをくり抜き、目鼻を付けたる物が置かれ、目を引いておる。
さて、異国では、このハロウィンで、子供たちが家々を訪ね、「トリック・オア・トリート」と唱えれば、その家ではキャンディーなどを渡す習わしがあると耳にした。
「菓子を呉れねば、いたずらしてやるぞ!」という意らしいが、実は、拙者が幼少の頃、これに似た催しがあったのだ。何という催しかは忘れてしもうた。いや、名など無かったやもしれぬ。
それは、夏の暑き時分であった。子供たちが集団を成して近隣を回り、「ロウソクケネバカッチャクド(ロウソクを呉れねば引っ掻くぞ)」と唱え、ロウソクを乞うたものだ。
それは、村の祭で用いる灯籠(とうろう)の灯りとするロウソクを調達していたのであった。ロウソクを集めるのが、子供たちの役目であった。村の行事たる祭りに、子供たちも一役を担っておったのだ。集めたロウソクを神社の境内に持ち運び、そこに居る大人たちより、褒美の赤飯を貰い、腹を満たした。
異国でやる「トリック・オア・トリート」は、自分が食うためのお菓子を集める。対して、拙者が育った村の子供たちは、祭に力を貸すためロウソクを集める。そも、意味合が異なるゆえ、あれはハロウィンの真似ではあるまい、と拙者は思うておる。
この催しは、拙者が小学校に入る頃、学校より禁止令が出て、行えなくなった。何ゆえ禁止と相成ったか、拙者の記憶には無いが、後に父上から聞いたところでは、「カッチャグド(引っ掻くぞ)という言葉が乱暴ゆえ、止めさせたい、と小学校の校長より集落の総代に相談があり、折しもその頃、電池や豆電球が安価で手に入るようになって、灯籠用のロウソクを集める必要も無くなっていたという事情も相まって、村の大人たちも異論を挟まなかったとのことだ。
拙者は長きにわたり、かの催しを忘れていたが、ある時、テレビを見ておると、北海道には「ローソクもらい」という催しがあると紹介されておった。今でも続いておるのかと驚いたものよ。北海道では「ロウソク出ーせ出ーせよ」と歌うそうだが、訪ねられた者はロウソクではなくお菓子を出すのが常だとか。照明用のロウソクが不要となり、ハロウィンに近き形で存続しておるようじゃ。
本日は朝は冷え込んだが、良き日和と相成った。
2025年10月29日ーこのページー2025年10月31日
