干し柿作り

メモ

庭に柿の木を植えて9年になります。昨年、十数個だけでしたが初めて実がなりました。まさに、桃栗三年柿八年だと感心しました。今年も期待していたのですが、わずか三個だけでした。その三個は買ってきた渋柿と一緒に渋抜きしました。来年は植えて10年目、かごに一つくらいは採れるのではないかと期待しています。

そこで、たくさん実ったときに備えて、干し柿作りについて調べておくことにしました。以下がその内容です。

干し柿の作り方

干し柿作りは、空気が乾燥し、気温が下がり始める晩秋が適しています。私の住んでいるのは北国なので、10月の半ばくらいから吊るすことができます。

柿の準備

  1. 材料の選択: 渋柿(ヘタに枝が残っているもの)を用意します。熟しすぎたり、柔らかいものは避けます。
  2. 洗浄と皮むき: 柿を水で洗い、水気を拭き取ります。ピーラーなどでヘタの周りも残さず、薄く皮をむきます。皮が残っていると、その部分の口当たりが悪くなることがあります。

紐をくくる

紐をくくる: 柿の枝の部分(T字型の枝が残っていると理想的)に、丈夫な紐(麻紐や荷物紐など)を結びつけます。一般的に、1本の紐に2個の柿を両端に結び、柿同士がくっつかないように間隔をあけて吊るせるようにします。

殺菌処理

紐にくくったら、殺菌処理をします。これは、カビ防止のためです。

  1. 熱湯消毒をします。鍋にたっぷりのお湯を沸騰させ、紐の部分を持って柿を熱湯に5秒から10秒ほどくぐらせます。この工程で表面が殺菌され、カビが生えにくくなります。
  2. 熱湯消毒の後に、食品用の焼酎やアルコール(35度以上など)を霧吹きで全体に吹きかけると、さらにカビ予防になります。
  3. カビが発生してしまったら、その部分を多めに切り取り、周辺に焼酎を吹きかけて消毒すれば、カビの進行を止められる場合があります。

干す

  1. 干す場所: 日当たりが良く、風通しの良い場所に吊るします。雨が直接当たらない、軒下などが理想的です。柿同士がくっつかないように間隔をあけて吊るしましょう。
  2. 雨天時の対応: 雨の湿気や夜露はカビの原因になるため、室内や雨の当たらない場所に移動させます。
  3. カビ防止: 干し始めの3日間で表面を早く乾燥させることがカビ予防に特に重要です。天気の良い日を選んで干し始めましょう。
  4. 乾燥期間: 柿の大きさや天候によりますが、だいたい2週間〜3週間ほどで完成します。

手揉み

干している途中で柿を揉むのがコツです。揉む作業をすることで、実の中の水分が均一になり、渋が早く抜け、甘みが凝縮された柔らかい干し柿になります。これが、美味しく仕上げるための最大のコツと言えます。

  1. 揉み開始: 吊るしてから1週間ほど経ち、柿の表面が乾いて硬くなってきたら、優しく揉み始めます。手で直接もむとカビが生えやすいので、洗った軍手などの清潔な手袋をして行うとよいでしょう。
  2. 揉み方: 柿を潰さないように、指で優しく全体を揉み、形を整えます。数日おきに繰り返すことで、渋みが早く抜けて甘くなり、柔らかく均一な仕上がりになります。

完成

好みの硬さになったら完成です。渋みが抜けているか確認しましょう。

保存方法

干し柿を長持ちさせるには、冷凍保存が最も効果的です。

干し柿はドライフルーツですが、水分が残っているとカビが生えやすいため、保存方法によって日持ち期間が大きく異なります。

主な保存方法と期間の目安を比較しました。

保存方法保存期間の目安保存のコツ
冷凍保存半年〜1年最も長持ち。ひとつずつラップで包み、密閉袋に入れて冷凍庫へ。
冷蔵保存1週間〜1ヶ月ひとつずつラップで包み、密閉袋に入れて野菜室へ。乾燥と匂い移りを防ぐ。
常温保存2〜3日水分がしっかり抜けたもののみ。風通しが良く涼しい場所に置く。

冷凍保存(長期保存に最適)

一度に食べきれないほどたくさんある場合におすすめです。

  1. 個別に包む: 干し柿を1個ずつラップでぴったりと包みます。包むことで乾燥を防ぎ、冷凍庫内の匂い移りや霜を防ぎます。
  2. 密閉する: ラップで包んだ干し柿を、冷凍用保存袋(ジッパー付き袋など)に入れ、空気をしっかり抜いて密閉します。
  3. 冷凍する: そのまま冷凍庫で保存します。

食べるときは、冷凍庫から取り出し、ラップをつけたまま冷蔵庫で5〜6時間、または常温で自然解凍すると美味しく召し上がれます。半解凍の状態でも、ひんやりとした食感が楽しめます。

冷蔵保存(比較的長期の保存)

1週間〜1ヶ月程度で食べきる場合におすすめです。

  1. 個別に包む: 1個ずつラップやキッチンペーパーで包みます。
  2. 密閉する: 密閉できる保存袋や容器に入れ、しっかりとフタやジッパーを閉めます。
  3. 冷蔵庫へ: 野菜室で保存します。冷蔵室よりも温度が高く、固くなりにくいです。

注意点:白い粉について

干し柿の表面に現れる白い粉(柿霜/しそう)は、柿の糖分が乾燥によって表面に出てきたもので、品質には問題ありません。湿度が高い環境に置くとこの粉が溶けてベタつく原因になるため、保存する際は湿気に注意して密閉することが大切です。

収穫作業

私は、ヘタに枝が残っているように切れば、枝を切ることになるので、翌年の収穫に影響があるのではないかと考えていました。ところが、そうではなく、干し柿を作るために、実の枝を切り取って収穫することは、翌年の収穫に大きな影響がないどころか、柿の木の性質上、理にかなった収穫方法でした。

柿は、その年に実がついた枝(結果枝)には、翌年は実になる花芽がつきにくいという性質があります。

  • 今年、実がついた枝は、役割を終えているため、冬の剪定(せんてい)で切り落とされることが多い枝です。
  • 干し柿のためにヘタに枝を残して収穫するということは、翌年には実がつかない部分を切り取っていることになるため、来年の収穫に影響はなく、収穫時に枝を残して切り取ることで、冬の剪定作業の一部を前倒しで済ませていることになるのです。

剪定作業

花芽がついた枝を切り落とさない

大切なのは、冬の剪定で、木全体のバランスや風通しを整えつつ、来年実をつける枝(花芽がついている枝)を間違って切り落とさないことです。

ちなみに、収穫時期が終わり、葉が落ちた後(12月~2月頃)に行う冬の剪定では、以下の枝を整理するのが一般的です。

  • 今年実をつけた枝(結果枝)
  • 内側に向かって伸びている枝
  • 地面に向かって垂れている枝

柿の木は、前年に伸びた新しい枝(結果母枝)に翌年の花芽がつき、実をつけます。この「前年に伸びた枝」を切りすぎないことが、翌年の収穫量を確保する上で最も重要な剪定のポイントになります。

柿の花芽の形と見分け方

柿の花芽(はなめ)は、翌年に実をつけるための大切な芽です。剪定の際には、この花芽を間違って切り落とさないように、形とつく場所を知っておくことが重要です。

柿の木の花芽は、主に以下の特徴で見分けることができます。

  • : 翌年に葉だけになる「葉芽(はめ)」に比べて、丸みを帯びてふっくらと太っています。
  • 大きさ: 葉芽よりも大きく、どっしりとして見えます。
  • : 葉芽と比べると、やや緑がかった色をしていることがあります。

柿の花芽は、主に以下の場所につきます。

  • 「前年に伸びた枝」の先端:
    • 柿の実は、「前年に伸びた枝」(結果母枝(けっかぼし)と呼ばれる)から、その翌年に新しく伸びた枝につきます。
    • そのため、この前年枝の先端にある、ふっくらとした芽(頂芽)が花芽であることが多いです。
  • 充実した枝:
    • 勢いが良すぎる枝(徒長枝)や、細すぎる枝には花芽はつきません。
    • 花芽は、適度な太さで充実し、十分な養分を蓄えた枝につきます。

見分ける時期

落葉後の冬の剪定時期(12月~2月頃)に、これらの特徴で芽を見分けながら、翌年実をつけない枝を切り落とします。

花芽の形成サイクル

収穫期には、すでに翌年の花芽が枝についています。柿の花芽は収穫の数カ月前、具体的には夏の時期(6月~7月頃)に形成が完了します。

  1. 夏(6月~7月頃):その年に伸びた枝(結果母枝)の先端付近に、翌年実をつけるための花芽が分化・形成されます。
  2. 秋の収穫期(10月~11月頃):花芽はすでに完成し、休眠状態で枝に宿っています。
  3. 冬の剪定期(12月~2月頃):葉が落ちて枝だけになった状態で、「ふっくらと太い芽」として確認できます。剪定はこの芽を切り落とさないように行われます。
  4. 翌春(5月~6月頃):花芽から新梢が伸び、開花して実を結びます。

収穫しているときに「来年の花芽」に気づかなかったとしても不思議ではありません。その時期はまだ葉が茂っていて見えにくい上、休眠中の芽は目立ちにくいためです。冬に葉が落ちてから初めて、翌年の収穫につながる大切な芽がはっきりと確認できるようになります。

木の手入れ

施肥

柿の木は成長してからも継続的に肥料を与えることが必要です。特に、毎年実を収穫したいのであれば、肥料は木の健康を維持し、実の品質や収穫量を高めるために不可欠な要素となります。

柿の木は、実をつけ、葉を茂らせるために毎年土壌から大量の栄養分を吸収します。

  • 実の生産: 柿の実は甘く栄養が凝縮しているため、多くの栄養を消費します。肥料を与えないと、木が疲弊し、翌年の実つきが悪くなる「隔年結果」を招きやすくなります。
  • 樹勢の維持: 肥料は、木を丈夫に保ち、病害虫への抵抗力を高めるためにも重要です。
  • 貯蔵養分の蓄積: 冬に与える肥料(寒肥)は、春の芽出しや開花に必要なエネルギーを、木に蓄えさせる役割を果たします。

柿の木には、基本的に年3回のタイミングで肥料を与えるのが理想的です。

時期肥料の種類と目的詳細
1. 寒肥(かんごえ)有機肥料(緩効性)中心時期: 12月~2月の休眠期
目的: 翌年の成長の元となる貯蔵養分を補給し、土壌を改良します。
2. 追肥(ついひ)化成肥料(速効性)中心時期: 6月~7月上旬(花が終わった後、実が肥大し始める頃)
目的: 実の肥大を助け、木の生育を支えます。実のつきすぎで木が弱っている場合は特に重要です。
3. 礼肥(れいごえ)化成肥料(速効性)中心時期: 収穫直後(9月下旬~11月頃)
目的: 収穫で消耗した木の体力を速やかに回復させ、翌年の花芽形成を助けます。

施肥の注意点

  • 与えすぎに注意: 肥料を過剰に与えると、枝葉ばかりが茂り(つるぼけ)、実つきが悪くなったり、隔年結果を促進したりする可能性があります。特に窒素肥料の与えすぎは、実の品質低下(着色不良など)を招くことがあります。
  • 施肥場所: 根の先端が伸びている場所(通常、枝の先端の真下あたり)の土を掘って埋めるか、木の周りに均一にまくようにします。根元に集中させすぎると肥料焼けを起こすことがあるため注意が必要です。

木の様子(実のつき具合、葉の色など)をよく観察しながら、適切な量の肥料を与えてください。

乱暴な扱いが花芽に影響する

前の冬の雪かきや枝の掘り起こしの際に、花芽を傷つけてしまったり、取ってしまったりすれば不作につながる可能性があります。

  1. 花芽は収穫期よりも前の夏頃に形成が完了し、冬には翌年の準備を整えて休眠状態で枝についています。
  2. 物理的な衝撃に弱い休眠中の花芽は、葉芽(葉になる芽)に比べて丸く大きく、枝の先端付近についています。この時期、枝が雪の重みなどで冷え、硬くなっている状態で、雪を払う、または掘り起こす際に枝に強い衝撃や摩擦が加わると、小さな花芽は簡単にはがれ落ちてしまったり、内部で損傷したりすることがあります。
  3. 被害が広範囲に及ぶ大雪で木全体が埋まり、多くの枝を掘り起こす必要があった場合、物理的な衝撃が広範囲の枝に及ぶため、翌年に実をつける予定だった多くの花芽を一度に失ってしまい、結果として木全体で不作になってしまった、という因果関係は十分考えられます。

雪が降った際は枝に負担がかからないよう、より優しく丁寧に雪を取り除くよう心がけてください。

その他の不作の要因

不作の原因は花芽の損傷だけでなく、以下のような複合的な要因も考えられます。

  • 隔年結果(かくねんけっか): 柿は豊作の翌年に不作になる性質(隔年結果)が強い果樹です。もし雪が降る前年が大豊作だった場合、雪の影響とは関係なく、木が休んでいた可能性もあります。
  • 低温による障害: 大雪や厳しい寒さそのものが、枝の先端にある花芽を凍害などで傷つけ、落ちてしまう原因になった可能性もあります。