わが家の犬は、ボール遊びが日課となっておる。ボールは、この子がわが家へ参った数年前に買い与えた、年季の入ったボールじゃ。
長年の使用にて、表面は薄汚れ、ひび割れ、舐めたり、クチュクチュと噛んだりも致すゆえ、誠にボロボロよ。無論、時折は洗っているが。
新しきものに取り替えてやろうと、全く同じ製品を買ってきて、差し出してみたのだが、まるで石ころか何かのように見向きもしない。物言わぬ彼にも譲れぬこだわりがあるらしい。彼にとっては、この古きボールは単なるおもちゃではなく、喩えるなら「宝物」なのであろう。
ボール遊びには決まったルーチンがある。拙者が放り投げたボールを華麗にキャッチすると、すぐさまバスタオルか座布団の下に隠してしまう。これは犬の常套手段と聞くが、拙者は毎度、大袈裟に「あれ?どこへ行ったかな?」と探し回る振りをする。すると彼は、しっぽを振りながら、嬉しそうに拙者の後についてくるのだ。そして、拙者が隠し場所を当て、「あった!」と声を出すと、パッと後ずさって、次の投球に備える態勢に入る。この一連の動きが、何度見ても可愛らしい。
ひとしきり興奮して遊ぶと、まるで電池が急に切れたように、その場で蹲り休みの態勢に入る。丁度、拙者もまた息切れをして、休憩したくなった頃合いじゃ。この何とも言えぬ阿吽の呼吸と、穏やかな疲れが、老いた拙者の安らぎのひとときである。
昨日は立冬、いつ初雪が降ってもおかしくない季節になり申した。今朝の気温はプラス二度、寒い朝でござった。
2025年11月7日ーこのページー2025年11月9日
