晩年の「交際」について考えた

老後

人生の終盤、例えば、後期高齢者と呼ばれる頃になると、「交際」の形は定年直後とは比べ物にならないほど大きく変貌します。それは、自分の心身の衰えによる行動力の減少、それは、年の近い友人や親戚も同様の事態に陥ってくるので、増幅してこれまでの「交際」に影響を与えます。そうした変化を受け入れて、できる範囲での交際を見つけなければなりません。

定年を迎えた直後は、まだ体力もあり、自由になった時間を使って趣味や旅行、地域の活動に積極的に参加し、新たな友人を作る人もいます。しかし、やがて来るのが身体的な衰えです。その象徴ともいえるのが、車の運転免許の返上でしょう。

地方に住む高齢者にとって、車は単なる移動手段ではなく、社会との接点を維持するための生命線と言っても大げさではありません。それを手放すことは、行動範囲が劇的に狭まることを意味します。行きたい場所へ自由に行けなくなる。親戚の家や遠方の友人を訪ねる回数は激減し、それは「外出の減少」、そして「交際の減少」へと直結します。

さらに、足腰の衰えや病気は、かつての友人や仲間との関係にも影響を及ぼします。誘われても出かけられない、相手に迷惑をかけたくないという思いから、自ら付き合いを断つようになる。かつて頻繁に会っていた親戚や友人との付き合いは、希薄化、あるいは形骸化していくことを受け入れざるを得ません。

この変化の波を、高齢者はどう受け入れるべきでしょうか。それは、「失ったもの」に目を向けるのではなく、「残されたもの」と「代替できる手段」に意識を向けることだと思います。

まず、移動手段については、公共交通機関や自治体による移動支援(コミュニティバス、敬老パスなど)、あるいは家族のサポート。これらを上手に活用することができれば、完全に外出を諦める必要はありません。

そして、希薄になりがちな友人や親戚との「交際」には、デジタルな手段に置き換えることを、是非試みたいものです。

直接会うことが難しくなっても、現代には素晴らしい代替手段があります。

  • 手紙・ハガキ:古くからの友人や親戚には、手書きの手紙や季節のハガキが、心を通わせる大切な手段となります。メールと異なり、相手の手元に残る「物」として、温かみと安心感を伝えることができます。
  • メール・LINE:スマートフォンを持つ高齢者が増える中、メールや特に「LINE」のようなメッセージアプリは、即時性と手軽さで、日常的な安否確認や短い会話を可能にします。孫や若い世代との交流にも欠かせません。「元気?」の一言が、つながりを維持する上で、大きな役割を果たします。
  • ビデオ通話(FaceTime、Zoomなど):遠方の家族や友人と、顔を見て話せるビデオ通話は、孤独感を大きく軽減してくれます。会話だけでなく、互いの生活の様子を少し見せるだけでも、安心感と親密感が増します。

これらへの置き換えは、単なる寂しさの穴埋めではありません。新しいツールを使いこなすことは、脳の活性化にもつながり、若い世代との話題を生み出すきっかけにもなり得ます。

晩年の交際は、自分のペースで、無理なく続けられる関係性を選ぶこと。そして、デジタルツールを恐れず活用し、新しい形の交際に一歩踏み出す柔軟性こそが、豊かな老後を送るための鍵となります。人生の夕暮れ時、心を照らしてくれる大切な人とのつながりを、さまざまな手段で守り育てていきたいものです。