配偶者が亡くなったあとの「姓・戸籍」に関するQ&A
配偶者が亡くなった場合、自分の姓や戸籍は自動的に変わりますか?
自動では変わりません。
特に手続きをしない場合、姓や戸籍はそのまま維持されます。また、亡くなった配偶者のご親族との親族関係(姻族関係)も継続します。結婚時に姓を変更した方が旧姓に戻したい場合は、別途手続きが必要になります。
苗字を結婚前の旧姓に戻すには、どのような手続きが必要ですか?
市区町村役場へ「復氏届(ふくうじとどけ)」を提出します。
配偶者のご親族の同意や、家庭裁判所の許可は不要です。
- 提出先: 本籍地、またはお住まいの市区町村役場の戸籍担当窓口
- 必要なもの: 復氏届(窓口にあります)、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- ※本籍地以外の役所に提出する場合は、戸籍謄本(全部事項証明書)が必要になる場合があります。
- 期限: 配偶者の死亡届を提出した後であれば、いつでも提出できます(提出期限はありません)。
- ※亡くなった配偶者が外国籍の方で、死亡後3か月を過ぎてから氏を変更する場合は、家庭裁判所の許可が必要となります。
【注意点】
姓が変わった後は、運転免許証、銀行口座、年金、健康保険、生命保険などの名義変更手続きがそれぞれ必要になります。あらかじめ計画を立てて進めるとスムーズです。
旧姓に戻した際、戸籍はどこに入ることになりますか?
「結婚前の元の戸籍(実家の戸籍)」に戻るか、「自分を筆頭者とする新しい戸籍」を作るかを選択できます。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 子どもを自分の戸籍に入れたい場合: 元の戸籍(実家)に戻ることはできません。日本の戸籍制度では「一組の夫婦と未婚の子」の2世代までしか同じ戸籍に入れないルールがあるため、新しい戸籍を作る必要があります。
- 実家の戸籍が全員除籍されている場合: 原則として元の戸籍に戻る(元戸籍を再編制する)ことも可能ですが、お子様の入籍予定などを考慮し、新戸籍を作るのが一般的です。
旧姓に戻すと、配偶者の遺産相続や遺族年金はどうなりますか?
旧姓に戻しても、相続権や遺族年金を受け取る権利はそのまま残ります。
旧姓に戻ったとしても「亡くなった配偶者の遺族(配偶者)」である事実・法律上の権利は変わりません。そのため、遺産を返還する必要もありません。
【借金(負の遺産)があるときの注意点】
旧姓に戻っただけでは、亡くなった配偶者の借金などの負債から逃れることはできません。借金を相続したくない場合は、死亡を知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ「相続放棄」の申立てを行う必要があります。
旧姓に戻したら、亡くなった配偶者の親族との関係も切れますか?
「復氏届」だけでは配偶者の親族との関係(姻族関係)は終わりません。
関係を終了させたい場合は、別途「姻族関係終了届」を市区町村役場に提出する必要があります。
- 特徴: 配偶者の親族の同意は不要で、死亡届の提出後ならいつでも届出が可能です。
- 効果: 法律上の姻族関係が解消されるため、配偶者のご両親等を扶養する法律上の義務がなくなります(同時に、扶養してもらう権利もなくなります)。
私が旧姓に戻した場合、子どもの姓や戸籍はどうなりますか?
子どもの姓や戸籍は自動的には変わりません。
親が「復氏届」を出しても、子どもは亡くなった配偶者の戸籍に残されたままとなり、親と子で姓や戸籍が異なる状態になります。
子どもを自分と同じ姓にし、自分の新しい戸籍に入れるには、以下の手続き(2ステップ)が必要です。
- 家庭裁判所での手続き:家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出し、許可を得ます(「審判書」が交付されます)。
- 市区町村役場での手続き:役場に「入籍届」を提出します。その際、家庭裁判所から発行された「審判書」を添付します。
※手続きは、お子様本人が行います(15歳未満の場合は、親権者などの法定代理人が代理で行います)。ご不明な点がある場合は、家庭裁判所の相談窓口や専門家(弁護士・司法書士等)にご相談されることをおすすめします。
旧姓に戻すケースは多いのでしょうか?
配偶者と死別した後に旧姓へ戻す(復氏届を提出する)ケースは、離婚による復氏と比べると「それほど多くはない(割合としては少数派)」ようです。
旧姓に戻す人が少数派である主な理由
- 子どもの姓や戸籍を変えたくない(最も多い理由) 子どもがいる場合、親が旧姓に戻しても子どもの姓は自動的には変わりません。子どもも同じ姓にするには家庭裁判所での手続き(子の氏の変更許可)が必要になります。学校や周囲への影響、手続きの手間を考慮して「子どものために今の姓のままにする」と判断される方が非常に多く見られます。
- 名義変更の手間が非常に大きい 運転免許証、銀行口座、クレジットカード、名義変更、不動産登記、年金、保険など、名義変更に伴う事務手続きは多岐にわたります。配偶者を亡くした直後の慌ただしい時期に、これほどの手続きを行うハードルが高いという現実があります。
- 今の姓での社会生活・人間関係が定着している 長年連れ添った姓で社会生活を送り、仕事や近所付き合い、友人関係が成り立っている場合、改姓による説明や手続きの不便さを避けてそのままの姓を選択する方が楽だということもあります。
一方で、旧姓に戻すことを選ぶ方の主な理由
旧姓に戻す選択をする方は、以下のような事情やお気持ちがある場合に手続きをとられる傾向があります。
- 実家(旧姓)への思い・家系の継承 実家に兄妹がおらず自分の旧姓を残したい、あるいは実家の墓や資産を継ぐ・実家に戻るという事情がある場合。
- 配偶者の親族(婚家)との関係の区切り 亡くなった配偶者の親族との関係に悩みがある場合や、将来的に相手の家の法要・お墓の管理・義理の親の扶養義務などの負担を明確に避けたい場合。(※姻族関係を完全に切るには「姻族関係終了届」も併せて出されることが多いです)
- 気持ちの区切り(再出発) 自分の人生として新たなスタートを切りたいという思いから旧姓に戻されるケース。
- 子どもがいない・またはすでに独立している 子どもの学校生活などへの影響を考慮する必要がない場合。
選択時のポイント
復氏(旧姓に戻すこと)は配偶者の死亡後であれば、期限なくいつでも届出が可能です。また、親族の同意も必要ありません。
そのため、死別直後の混乱した時期に焦って決める必要はなく、「当面は今の姓のまま生活し、子どもが独立したタイミングや自分の生活環境が変わった時に改めて考える」という形で後から旧姓に戻す方もいらっしゃるようです。


