定年前に診察を受けるメリット
責任感が強い人は、多少体調が悪くても退職日まで頑張って、退職して時間がとれるようになったら病院に行こうと考えがちです。これはすごく危険です。体調が悪いのであれば最優先で病院に行って、それからやれる範囲で仕事を片づけましょう。
病院に行くメリットはいろいろあります。
まず、基本的なことですが、健康であることは当たり前ではありません。健康はなにものにも代えられない宝物です。健康を損なうのは自分の責任ばかりではありませんが、自分を過信したり、周りに気兼ねして健康を損なった人は、ほぼ例外なく後悔します。自分の体は自分で守りましょう。特に転職などで新しい仕事に踏み出すときは万全の体調で取り組みたいものです。
次に、金銭的な面を考えましょう。
病気になってしまった場合に在職中に病院に行っていたか、退職後に病院に行ったかで大きな違いがでることがあります。
在職中に療養生活にはいると傷病手当金を受給できることがあります。
在職中に初診日があると障害厚生年金を受給できることがあります。
傷病手当金は健康保険から支給されます。障害厚生年金は厚生年金から支給されます。いずれも、働いて得たお給料から天引きされています。少なくないお金を支払っているのですが、退職してしまってから病院に行ったのでは受給できない場合が多いと思ってください。
また、病気の原因が仕事や職場にあると思える場合は、労災保険の給付を受給できる可能性があります。この手続も在職中のほうが良いです。
傷病手当金とは
健康保険の被保険者が病気やケガのために会社を休み、給与が減ったり無くなってしまったときに、健康保険から支給される手当です。
傷病手当金は、4日以上休んだ時に支給され、最長で1年6か月支給されます。
その額は大雑把に言えば賃金の3分の2ですが、療養中の生活にとってとても頼りになる制度です。
傷病手当金は、受給中に退職しても、多くの場合は引き続き受給できます。ただし、在職中に手続きしなければなりません。退職してからでは手続きできません。
障害厚生年金とは
病気になってもほとんどの場合は大事にいたらないと思いますが、万一、障害が残るような病気であれば大変です。
そうした場合に支給される障害年金という年金がありますが、国民年金の加入者は障害基礎年金を受給できます。会社などに勤務している人は障害基礎年金に加えて障害厚生年金もあわせて受給できます。
大雑把に言えば、障害基礎年金だけだと月に6万円強ですが、障害厚生年金がもらえると、さらに月に10万円は多くなります。
どちらになるかは初診日に加入していた年金制度によります。
初診日が退職後であれば、障害の程度などが障害年金に該当しても障害厚生年金を受け取ることができません。障害基礎年金だけになります。
初診日に会社等に在籍中であれば、辞めた後に障害の状態になったとしても障害厚生年金の対象になります。同時に障害基礎年金も受け取ることができます。
初診日とは、その病気について医師が初めて診断した日です。
この初診日というのがとても大事です。初診日が1日違って受給できなかったり、初診日が分からないために全く受給できないこともあります。病院にかかったら診察券や領収書などのもらったものは全て保管しておく習慣をつけましょう。
なるべくなら障害年金を受給する状態に至らないのがよいのですが、辞めてから病院に行こうというちょっとした判断ミスのために、生活を支えてくれる年金を失うのは残念です。
労災保険とは
事業主は従業員を安全な状態で仕事させる責任があるので、業務上の原因で従業員がケガや病気になったときは、その治療費等は事業主が負担するべきことが労働基準法に定められています。労災保険は、事業主の負担を肩代わりするための保険制度で、業務上のケガや病気に対していろいろな給付を行います。
退職後でも申請できないことはありませんが、なるべく早く受診し、仕事との因果関係を見極めた方がよいでしょう。
労災であるかどうかの判定は労働基準監督署が行いますが、体調の悪さが会社の仕事や職場環境からくると思われるのであれば、受診するときはその旨を最初から病院に申し出ることも重要です。
病気の原因が仕事や職場環境によるものであれば、その治療費などを自分で負担するのは割に合いません。労災保険を使うのは労働者の権利です。