遺族年金の改正に向けて動きがありました。
社会保障審議会の年金部会で遺族年金の改正案の検討が行われました。
社会保障審議会は、厚生労働大臣の諮問に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議する機関です。逆に言えば社会保障に関する重要な事項は社会保障審議会での審議を経なければ法案にならないのですから、とても重要な役割を担っている審議会です。
主な検討事項は次のとおりです。
現行の制度
遺族厚生年金は、厚生年金に加入している人(公務員や会社員など)が亡くなった際に、配偶者らに年金が支給される制度ですが、男女差や年齢差によって受給期間が異なる制度になっています。
具体的には
① 女性の場合は、夫が亡くなった時点で30歳未満であれば、受給できる遺族厚生年金は5年間の有期年金である
② 女性の場合は、夫がなくなった時点で30歳以上であれば、遺族厚生年金が5年で消滅することはない(ずっと受給できる)
③ 男性の場合は、妻が亡くなった時点で55歳未満であれば遺族厚生年金を受給できない。
示された改正案
男女ともに3年間の有期年金とする
夫が亡くなった時点で30歳未満である女性は改正前と同じです。30歳以上の女性はガクンと受給期間が縮小されます。
男性の場合、55歳未満でも対象になるので現行より有利になりますが、高年齢者だと自分の老齢厚生年金の額により、影響ない人も不利になる人もいます。
ただし、経過措置があります。
① 妻の受給期間の5年間への短縮は時間をかけて段階的に行う。
② 受給中の人はこれまで通り受給できるものとする。
なお、遺族厚生年金の本体とは別に、40歳以上の妻に64歳まで加算されている「中高年寡婦加算」を段階的に廃止することも提案に含まれています。
今後の予定
2025年の通常国会に改正法案が提出されるようです。
一時ネットで賑わった「遺族年金廃止」ということではありませんが、夫が亡くなった時点で30歳以上の女性にとっては、「生涯支給」→「5年有期」と大きな変動になります。
なお、亡くなった時点で60歳以上の配偶者と、子(18歳年度末まで等)がいる場合の世帯への給付については改正の対象になっていません。改正後もこれまで通りの基準で支給されます。
(2024年8月7日時点の情報です)
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