若き折は、身も軽く、痩せたる体つきにて候。
されど、世に出て働くようになりし頃より、運動もせず、飯は多く食らい、酒もよく飲み申したゆえ、次第に腹が出て参り申した。
「こりゃいかんな」と思い至りしは、四十歳の頃にて候。
これを機に、身体を鍛えんと決意し、近所の体操所――いわゆる「スポーツジム」とやらに通うことといたし候。
そこで拙者は、主に「トレッドミル」と申す動く床の上を、ひたすら歩き続け申した。歩けば歩くほど、身に良き効果が現れ、さすがに若き日の姿には戻らぬまでも、体つきはかなり整い申した。
ところが、その後、勤め先にて多忙を極め、また、夜な夜な酒席に呼ばれることも増えたため、ついにはジム通いをやめてしまい申した。
それから幾星霜、再び体操所に足を運び始めたのは、晴れて勤めを退いた後のことにて候。
今度は、体に無理なく、まずは軽く伸ばし――いわゆる「ストレッチ」と申す動き――をし、その後は早足にて三十分か四十分ばかり歩くことを日課と致し候。
そのおかげか、増え始めておった体重も、徐々に元に戻り、拙者「これはなかなかに良きことぞ」と悦んでおったのでござる。
されど、時勢により「新型コロナ」なる疫病が流行り出し、面布(マスク)の着用や更衣場の入場制限など、何かと不自由が増し、再びジムをやめてしまい申した。
されど、ジムに通っておったおかげで、身体を動かす習慣は身につき申したゆえ、今度は屋敷のまわりを歩くことにいたし候。
日ごとの目標は、携えた「アップルの時計」にて「運動三十分」と定め申した。
されど、外を歩くというもの、屋内の動く床とは勝手がまるで異なり申す。
路面には起伏があり、信号にて立ち止まる必要もあり、時には吠える犬に出くわすこともあり……最初は「これは続かぬやも」と思うたものでござる。
されど、日を重ねるうちに慣れて参り、路面の起伏も苦にならずなったは、恐らく腹の芯――いわゆる「体幹」と申す部位――が鍛えられたからにござろう。
歩く距離も少しずつ延び、いまでは遠方に出向くこともあり申すが、ふだんは屋敷まわりを歩くことで満足しておる次第。
ありがたきことに、この歩み、ようやく習慣として身に付いて参った様子にて候。
今朝がたのことでござる。五羽の白鳥が、我が屋敷のすぐ上を悠々と飛び過ぎて行き申した。
いよいよ冬の訪れ、身に沁みて感じ入り申した。今朝の気温は、十度ほどまでしか上がらず、風も冷たく、まことに季節の移り変わりを実感いたしたものでござる。
2024年11月5日ーこのページー2024年11月7日