2024年11月28日

日記

書棚より、かつて読みし「フロスト警部」を取り出し、また手に取り候。
作者はR・D・ウィングフィールド、訳は芹澤恵殿、東京創元社の名作にてござる。

この物語、英吉利(イギリス)の警察を舞台とし、主人公のフロスト警部は、まことに型破り。いや、型など最初から持ち合わせておらぬような御仁でござる。
『クリスマスのフロスト』『夜のフロスト』『フロスト始末』など、幾つも出ておる。

さてこのフロスト警部、その滅茶苦茶ぶりは時に行き過ぎで、また舞い込む事件はどれもこれも陰惨極まりなし。
通常であれば、拙者など、残虐な描写にて眉をひそめるところにござるが、このシリーズに限っては、なぜか不思議と読むことができる。

それというのも、フロストの放つ下品な冗談、軽口、ふざけた振る舞いが、かえって悲惨の度を和らげるがゆえ。
かの御仁自身も、「冗談でも言わねば、やっておれぬ」と申しておった。まさにそのとおりにござろう。

登場人物に、マレット署長という男がござる。
常に高圧的で情の薄い人物に描かれ、フロストとは水と油。しかしながら、フロストにいくらあしらわれても、なおもめげぬ精神力には舌を巻く。
彼らの丁々発止のやり取りも、この物語の妙味の一つなり。

フロストの映像化作品も拝見仕ったが、小説のフロストとは印象が大いに異なり、やや違和感を覚えた次第。

ふと、筆を進めるうち、拙者の記憶に浮かんできた書籍がある。
それは、若かりし頃に読んだ「マルティン・ベック」シリーズ。スウェーデンはストックホルムの警視庁を舞台とし、作家は夫婦の共著によるものにて、『ロセアンナ』を皮切りとする重厚な警察小説にて候。

こちらはフロストと違い、下品さ皆無。ひたすら淡々と、迷いながら歩みを止めない、足で稼ぐ刑事の物語でござる。
興に乗り、ストックホルムの地図を買い求めて、物語の舞台を辿りながら読んものでござった。


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