昨夜、「Amazonプライム」なる映像の座敷にて、「パリタクシー」なる仏蘭西の映画を拝見仕り候。
物語の発端は、九十二歳の婦人、名をマドレーヌと申す。その日、彼女は老人の住まう館へと移るため、ひとつの駕籠──今の言葉で申せばタクシー──を呼び寄せ申した。御者を務めるはシャルルなる男、やや偏屈にも見える中年の士にて候。
行き先は決まっておるものの、マドレーヌはその道すがら、思い出の地々に立ち寄ることを願い出る。こうして二人の駕籠は、終日パリの街を巡ることとなり、拙者ども観る側も、まるで彼の都を旅するかのような心持ちとなり候。殊に、夜の景色の美しさ、言葉に尽くしがたく。
作中、マドレーヌが漏らした一言が、胸に深く染み入り候——
「昨日すてきな兵隊さんと踊ったと思えば、その翌日には老人ホームで人生を終えていく。味気ない介護食を食べながら。すべてが一瞬だった。」
その兵隊と踊ったのは、彼女が十六の折のこととか。
拙者、今のところ「すべてが一瞬だった」とまでは感じ申さぬが、それでも年を重ねるごと、彼女の言葉が、しみじみと身に迫るようにもなり申した。まこと、良き映画でござった。
さて本日は、空は曇りがちにて、時折雨も混じり候。昨日吹き荒れた風はようやくおさまり、気温は十三度とやや肌寒き一日にて候。
2025年4月13日ーこのページー2025年4月15日