背を超すほどの雪がようやく融け、地面が顔を見せたかと思えば、早くも草花が芽をのぞかせておる。
何もせずとも、春というものは然るべき時に訪れるものよのう。
されど、いまだ肌には冷えが残り、草の緑もあどけなきばかりで、心のうちに春の実感が満ちるには、もうしばらく時を要するようでござる。
とはいえ、あと二月もすれば、暑き夏がやって来るという。頭ではその巡りを知ってはおるものの――
つい先だってまで、あの忌々しき雪に囲まれておった折には、これもまた季節の一つと受け入れる余裕など、すっかり失うておった。
雪の白さに心までも閉ざされてしまいそうになったのは、年のせいか、それとも我が未熟ゆえか……
本日は、曇り空にときおり小雨が混じる、物静かなる一日。
軒先より雨垂れの音を聞きながら、草の芽に心和ませる、そんな日でござった。