この頃、理髪所にはとんと足を運んでおりませぬ。
最後に参ったのは、昨年の霜月――すなわち十一月のことで、それ以来、早や半年以上が過ぎ申した。
と申しても、伸び放題というわけではござらぬ。拙者、自ら髪を刈っておる次第にて。
出立し、店に着いてしばし待ち、ようやく始まり、終えて帰宅するまで、おおよそ二〜三時間は費やすこととなります。
これを毎月ともなれば、正直なところ、以前より「面倒なことよ」と感じておりました。
で、ある折ふと思いついたのです――
「いっそ、我が手で刈ればよいのではあるまいか」と。
多少不格好になろうとも、今や隠居の身。見目を気にしてやかましく申す者もおりませぬ。
調べてみれば、「YouTube」なる巻物のような映像の中に、セルフカットの作法がいくつも記されておりました。
「これならば、拙者にもできそうじゃ」と思い立ち、早速、Amazonなる商人の蔵から電動の髪刈り器を二千文ほどにて取り寄せました。
あわせて、百均と呼ばれる店にて、洗濯用の挟み(髪を留める道具)と、肩を覆うための布(マントのごときもの)も調達。
家族に話せば「失敗したらどうする」などと案じられるであろうと察し、彼らが外出した隙に、いざ実行。
帰宅した者たちは、何も申さず――否、どうやら気づかぬ様子。
これに気をよくして、以後、月に一度ほど、自ら刈ることを習いとしております。
先日、半年経った頃合いに話して聞かせたところ、大いに驚かれ申した。
心得として申せば、YouTubeの指南も大事なれど、やはり「技を盗む」が肝要にて候。
セルフを始めんと心に決めてより、理容にて刈ってくれる者の手元を、目を凝らして観察いたしましてな。
己の頭のみならず、隣席の客の髪さばきにも注意を払って、まさに「ガン見」――凝視を続けるうち、三度ほど通えば「よし、これならば」と思えるようになった次第。
刈りすぎは取り返しがつかぬゆえ、やや長めに刈るのが肝要。
また、やってみて初めて気づいたことながら――鏡に映る像の左右が逆というのは、まことに手強き敵にござる。
されど、これも経験を重ねれば慣れるもの。
いまでは、鏡に惑わされぬよう、己の手の感覚を信じ、鏡はあくまで参考にとどめるよう心がけております。
鏡を凝視すれば、どうにも手元が引きずられてしまうもので。
本日、午前中は曇り、午後には晴れ間も覗き、良き天気ではありましたが――
昨日に増して涼しく、最高気温は十九度とのこと。まことに過ごしやすき一日でござりました。
2025年6月11日ーこのページー2025年6月13日