「もっとスキルを身につけてキャリアアップしたい」「新しい分野に挑戦したいけれど、費用が心配…」。そんな風に考えている皆さん、厚生労働省の「教育訓練給付金」制度をご存知ですか?これは、皆さんの主体的なスキルアップやキャリア形成を支援するために、国が教育訓練の受講費用の一部を支給してくれる、とても心強い制度です。
働きながらでも受講しやすいオンライン講座や夜間・土日の講座も多く、皆さんの「学びたい」という意欲をしっかりサポートしてくれます。この制度を上手に活用して、自身の可能性を広げ、理想のキャリアを実現しましょう!
教育訓練給付金って何?
教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定した教育訓練を修了した方に対し、その費用の一部が支給される雇用保険の制度です。
対象となる教育訓練は、そのレベルや内容に応じて以下の3種類に分かれており、それぞれ給付率が異なります。約17,000講座が対象となっています。
1. 専門実践教育訓練
中長期的なキャリア形成を支援するための教育訓練が対象です。業務独占資格(例:介護福祉士、看護師、社会福祉士)や、経済産業大臣認定の第四次産業革命スキル習得講座、ITSSレベル3以上の情報通信技術関係資格の取得を目指す講座、大学院・大学・専門学校の課程(専門職大学院や職業実践専門課程など)が含まれます。
• 給付率: 受講費用の最大80%が支給されます(年間上限64万円)。
◦ 通常支給: 受講費用等の50%(年間上限40万円)が、訓練受講中6か月ごとに支給されます。
◦ 追加支給: 訓練修了後1年以内に目標資格を取得し、雇用保険の被保険者として就職した場合、または就職している場合は、給付率が70%(年間上限56万円)に引き上げられ、すでに支給された分との差額が支給されます。
◦ 2024年10月以降の拡充: 2024年10月1日以降に講座を受講開始し、上記の要件を満たした上で訓練修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合、給付率が80%(年間上限64万円)に再計算され、差額が支給されます。
• 事前の手続き: 受講開始前に、訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、「ジョブ・カード」を作成することが必要です。
2. 特定一般教育訓練
速やかな再就職や早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象です。介護支援専門員実務研修、大型自動車免許、ITSSレベル2の情報通信技術関係資格などが対象講座の例として挙げられます。
• 給付率: 受講費用の最大50%が支給されます(上限25万円)。
◦ 2024年9月までに受講を開始した場合は、受講費用の40%(上限20万円)が支給されます。
3. 一般教育訓練
その他の雇用の安定・就職促進に資する教育訓練が対象です8。税理士、社会保険労務士、Webクリエイター、TOEIC、簿記検定、宅地建物取引士などの資格取得を目指す講座が含まれます。
• 給付率: 受講費用の20%が支給されます(上限10万円)。ただし、20%に相当する額が4千円を超えない場合は支給されません。
あなたが給付金を受けられる条件は?
教育訓練給付金を受けるには、以下の雇用保険の加入期間などの要件を満たす必要があります。パート・アルバイトや派遣労働者の方も対象です。
• 在職中の場合: 受講開始日に雇用保険の被保険者であること。
• 離職中の場合: 受講開始日に被保険者でない場合でも、被保険者資格喪失日(離職日の翌日)から受講開始日までが1年以内であること。
◦ 妊娠、出産、育児、疾病、負傷などの理由で引き続き30日以上受講を開始できない期間がある場合は、ハローワークへの申出により最長19年まで適用対象期間を延長できます。
• 雇用保険の加入期間(支給要件期間):
◦ 初めて教育訓練給付金を受給する場合: 雇用保険の被保険者期間が1年以上あること。専門実践教育訓練を受講する場合は2年以上必要です。
◦ 過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合: 前回の受講開始日以降の雇用保険の被保険者期間が3年以上あり、かつ前回の支給日から今回の受講開始日の前日までに3年以上経過していることが必要です。
支給対象となる費用(教育訓練経費)について
教育訓練給付金の支給対象となる費用は、皆さんが教育訓練実施者に対して支払った入学料と受講料の合計(最大1年分)を指します。
ただし、以下の費用は対象外となります。
• 検定試験の受験料
• 必ずしも必要とされない補助教材費
• 補講費
• 各種行事参加のための費用
• 学債など、将来現金還付が予定されている費用
• 受講のための交通費
• パソコンなどの器材の費用
• クレジット会社に対する手数料
• 支給申請時点での未納の額
また、受講開始日前1年以内にキャリアコンサルティングを受けた場合は、その費用を教育訓練経費に加えることができますが、上限は2万円です。 事業主(会社)から教育訓練の受講に伴い手当などが支給される場合、それが明確に入学料や受講料以外に充てられる額を除き、教育訓練経費から差し引いて申請する必要があります。割引制度などが適用された場合は、割引後の金額が教育訓練経費となります。
申請の流れと必要な手続き
1. 講座を探す
約17,000の対象講座は、厚生労働省の「教育訓練給付制度 検索システム」で調べることができます。オンラインで受講できる講座や、夜間・土日に受講できる講座も多く、働きながらでも学びやすい環境が整っています。
2. 事前の確認(支給要件照会)
教育訓練の受講を始める前に、ご自身が給付金の支給要件を満たしているか、また希望する講座が厚生労働大臣の指定を受けているかについて、ハローワークに照会することができます。特に、雇用保険の被保険者資格喪失日以降1年以内かどうか、支給要件期間が初回1年(専門実践は2年)、2回目以降3年あるかなどが不明な場合は、事前に確認すると良いでしょう。「教育訓練給付金支給要件照会票」を記入し、本人確認書類を持って、お住まいを管轄するハローワークに提出してください。電話での照会は、個人情報保護のため受け付けていません。
3. 専門実践教育訓練の事前手続き(受講開始前)
専門実践教育訓練給付金を受給するためには、受講開始前に「訓練対応キャリアコンサルタント」による「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、就業の目標などを記載した「ジョブ・カード」を作成する必要があります。このジョブ・カードと「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」などを、訓練受講開始日の原則2週間前までに、お住まいを管轄するハローワークに提出し、受給資格確認手続きを行います。
4. 支給申請
支給申請は、講座の修了後に行います。
• 一般教育訓練・特定一般教育訓練: 受講修了日の翌日から起算して原則1か月以内に支給申請手続きを行ってください。
• 専門実践教育訓練: 受講開始日から6か月ごと、または訓練修了日の翌日から起算して1か月以内に支給申請手続きを行う必要があります。
申請は、お住まいを管轄するハローワークで受け付けています。また、e-Gov電子申請(https://shinsei.e-gov.go.jp/)から電子申請も可能です。
5. 必要な書類
支給申請には、以下の書類などが必要です。
• 教育訓練給付金支給申請書
• 教育訓練修了証明書
• 領収書
• 本人・住居所確認書類
• 個人番号確認書類(マイナンバーカード等)
• 払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード
• 教育訓練経費等確認書
• その他、還付金を受けた場合やクレジット払いなどの事実を証明する書類
• (専門実践の場合)キャリアコンサルティングの費用に係る領収書、記録、実施証明書。
教育訓練実施者が発行した領収書のみが有効であり、販売代理店などが発行した領収書は認められません。
教育訓練支援給付金について(離職者向け)
専門実践教育訓練給付金の受給資格者のうち、失業状態にある方が訓練受講をさらに支援するため、「教育訓練支援給付金」が支給される場合があります。これは、雇用保険の基本手当の日額に相当する額の60%(令和7年3月31日以前に受講開始した場合は80%)が支給されるものです。
ただし、この給付金は、専門実践教育訓練の受講開始時において雇用保険の被保険者ではない方(離職している方)が対象です。在職中に専門実践教育訓練の受講を開始した方が、受講途中で離職しても、この給付金の支給対象とはなりませんのでご注意ください。
知っておきたい注意点
• 不正受給について: 偽りその他不正の行為によって給付金を受けたり、受けようとしたりした場合、給付金を受けることができなくなるだけでなく、不正に受給した金額の返還に加えてその2倍の金額の納付を命じられ、詐欺罪として刑罰に処せられることがあります。正しく申請しましょう。
• 決定への不服申し立て: ハローワークの支給(不支給)の決定に不服がある場合は、処分を行ったハローワークを管轄する都道府県労働局の雇用保険審査官に対して審査請求(不服の申し立て)を行うことができます。
困った時は?
教育訓練給付金に関するご不明な点や、さらに詳しい内容を知りたい場合は、お住まいを管轄するハローワークにご相談ください。また、キャリア形成・リスキリング推進事業では、無料でキャリアコンサルティングを受けることができます。
皆さんの積極的なスキルアップが、ご自身のキャリアを豊かにするだけでなく、企業の成長にも繋がります。ぜひこの制度を最大限に活用し、新たな一歩を踏み出してください!