遺族厚生年金の支給条件は?いくらもらえる?

遺族年金

遺族厚生年金とは

遺族厚生年金は、厚生年金被保険者(会社などに勤務している人)が亡くなったときに残された遺族に支給される年金です。国民年金だけに加入している自営業者等の方は対象になりません。

遺族基礎年金より遺族の範囲が広いので、遺族基礎年金が受給できない人も受給できることが多いです。制度としては、遺族基礎年金と共通している部分も多いので、遺族基礎年金の説明もあわせてごらん下さい。

遺族厚生年金の支給要件

遺族厚生年金が支給されるには、死亡した者が短期要件、または長期要件のいずれかに該当していなければなりません。

短期要件に該当したとき

1.被保険者(会社の健康保険に加入している人は厚生年金の被保険者です)が死亡したとき、

2.被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき(すでに会社を辞めていてももらえます)。

3.障害等級1級または2級に該当する障害厚生年金の受給者が死亡した場合

上の一つに該当した場合を短期要件といいます。

短期要件のうち、1、2に該当する場合は、保険料納付要件を満たしていなければなりません。

長期要件に該当したとき

老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。(すでに会社を辞めていてももらえます)。

上を長期要件といいます。

25年というのは、老齢年金の受給資格期間が25年(300月)以上という意味です。

老齢年金の受給資格期間は、国民年金の第1号、第2号(厚生年金加入)、第3号被保険者期間すべてのことなので、厚生年金加入期間とは異なります。

つまり、老齢年金の受給資格期間が25年以上で遺族厚生年金の「長期要件」に該当しますが、その時点で厚生年金加入期間が25年とは限りません。

短期要件の場合は、年金額形成期間が十分ではないために、年金額の計算に300月の最低保障がつきますが、長期要件に該当すると300月の最低保障はつきません。厚生年金加入期間が少なければ、長期要件に該当することで遺族厚生年金が少なくなってしまいます。

また、長期要件に該当すると、「死亡」という保険事故が発生した時点で、どの年金制度(第1号、第2号、第3号)に加入していたかは関係なくなります。

老齢年金の受給資格期間がすでに25年ある人が、会社勤めを辞めて第1号被保険者になったときに死亡した場合でも、一定の遺族に「遺族厚生年金」が支給されるということです。

長期要件の25年は生年月日等によって短縮されます。

短期要件と長期要件の選択

たとえば、受給資格期間が25年以上ある第2号厚生年金被保険者の方が死亡したときは、短期要件と長期要件のいずれにも該当します。申出が無ければ短期要件で計算されます。

短期要件と長期要件のどちらが有利かは人によって異なります。あらかじめ年金事務所で計算してもらった方がよいでしょう。

保険料の納付要件

保険料の納付要件とは、「死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上ある」か、「死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料滞納期間がない」か、いずれかの条件を満たすことです。

長期要件を満たしている場合は、すでに25年以上納付しているので、保険料納付要件は問われません。

遺族厚生年金の支給対象者

遺族基礎年金より広い範囲の方が支給を受けられます。次の順位で受給権が発生します。

いずれも、亡くなった人により生計を維持されていたことが条件です。

1.遺族基礎年金の支給の対象となる遺族(18歳年度末までの子など)
2.子のない妻(内縁関係を含む)
3.55歳以上の夫(内縁関係を含む)、父母、祖父母(60歳から支給)

夫の場合には、妻が死亡した当時に55歳以上でなければ対象にならず、その条件を満たしても受給開始は60歳になってからです。

4.孫(18歳の誕生日の属する年度の年度末を経過していない者。または20歳未満で1・2級の障害者)

夫婦であった期間に条件はありません。婚姻期間が長期であれ短期であれ、死亡時に配偶者であれば対象になり、再婚等がなければ原則として終身受給できます。

受給権は移転しません。例えば、子のない妻が受給した場合、その元妻が再婚した場合、遺族厚生年金を受けられなくなりますが、その権利が父母に移ることはありません。

30歳未満の妻は条件が厳しい

妻は、夫の死亡時に30歳未満で子(18歳年度末までの子、障害がある場合は20歳未満の子)がいない場合は5年間の有期給付です。

残された妻が30歳になっているかどうかですごく違うということです。仮に夫の死亡時に妻の年齢が30才の場合、その後再婚しなければ生涯、遺族厚生年金を受給できます。仮に夫の死亡時に妻の年齢が29才11ヶ月と何日かだとすると、5年間だけの支給となります。夫の死亡日が数日異なるだけで、生涯にもらえる年金に大きな差が生じます。

子(18歳年度末までの子、障害がある場合は20歳未満の子)がいる場合は、遺族基礎年金と合わせて遺族厚生年金を受給できますが、妻が30歳に到達する前に、子の死亡などで遺族基礎年金の受給権が消滅したときは、受給権消滅から5年で遺族厚生年金の受給も止まります。

子が配偶者の子で、自分の実子でない場合(いわゆる連れ子)は、その子は遺族厚生年金の対象になりません。生前に養子縁組をしていれば、法律上の子なので、遺族厚生年金の支給対象になります。

遺族厚生年金の額

長期要件に該当する場合は、遺族厚生年金の額は在職時の給与と加入年数によります。亡くなった人が受けられるはずであった老齢厚生年金の4分の3が支給されます。

短期要件の場合は、被保険者期間が300月未満の場合は300月として読み替えて計算します。たとえば、厚生年金保険に加入して1年ほどで亡くなった場合でも300月加入したとみなして年金額が計算されます。

条件を満たせば中高齢寡婦加算が加算

遺族厚生年金を受給する40歳以上65歳未満の妻には、条件によって中高齢寡婦加算がつきます。

老齢年金との関係

遺族厚生年金を受給している人が65歳になって老齢年金も受給できる場合は、どちらか有利な方を選択することになります。

この場合、「年金受給選択申出書」の「年金額が高い方を選択する」にチェックして提出すれば自動的に高い方を選択してくれます。

そして、次のいずれか高いほうを受給できます。

1 遺族厚生年金の受給額
2 (遺族厚生年金×3分の2)+(老齢厚生年金(子の加給年金額を除く)×2分の1)

言い方を変えれば、老齢厚生年金を受給できる方は、自分の老齢厚生年金を全額受け取り、その金額が、遺族厚生年金(または、遺族厚生年金の3分の2+老齢厚生年金の2分の1)より少ない場合、その差額を遺族厚生年金として受け取ることになります。

60歳台前半の人に支給される「特別支給の老齢厚生年金」の受給資格が発生した人は、遺族厚生年金か自分の「特別支給の老齢厚生年金」のいずれかを選択することができます。両方もらうことはできません。


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