遺族年金における内縁の扱い

遺族年金

内縁関係と遺族年金

婚姻届けを出していないが、実質的に夫婦として生活している、いわゆる内縁関係の場合は、遺族年金における配偶者に該当するのでしょうか。

婚姻届を出し、戸籍に記載されることで法律的に夫婦となるのですから、遺族年金の受給権者は、法律上の配偶者に支給されるのが、原則です。

しかし、例外的な扱いとして、内縁関係の配偶者に遺族年金が支給されることがあります。

以下にその要件を解説します。

相手に法律上の配偶者がいない場合

両方とも戸籍上は独身で、婚姻の届出をしていないだけで、その他の面では、夫婦として生活していることが認められる場合で、同じ家に住んでいてその住所で住民登録をしていれば、遺族年金の受給権者になれる可能性が高いです。

同一世帯でどちらかが、未届の妻(夫)という続柄になっていればさらによいです。

同居しているけれども住民登録が別のところであれば、同居の実態を何らかのかたちで証明する必要があるので少し難易度が上がります。

別居しているとさらに難易度が上がります。

相手に法律上の配偶者がいる場合

原則として、戸籍上の配偶者が優先です。

戸籍上の配偶者と別居していたとしても、離婚が成立していなければ、法律的には夫婦関係が継続していることになります。

法律上の妻がいる場合には、内縁の妻が遺族年金を受け取るのは大変困難です。

ただし、受け取ることができる場合があります。

法律婚の方が破たん状態になっていること、

そして、内縁関係の方が事実上の婚姻関係だと認められることです。

婚姻の破たん状態とは
1.当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるが戸籍上離婚の届出をしていないとき

2.一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって、その状態が長期間継続し、当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるとき

具体的には、

離婚合意はしていないが、別居して10年以上経過しており、
① 別居中
② 経済的援助(生活費の仕送り)をしていない
③ 音信又は訪問もない

という状態です。

お金を少しでも渡していたり、時折訪問しているという関係が認められれば、破たんしていると認められない可能性がでてきます。

事実婚とは

遺族厚生年金の対象者である配偶者は、必ずしも法律上の配偶者に限られていません。

「配偶者には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする」という定めています。

事実婚の条件は、

・実態が夫婦であるといえるか
・生計同一関係であるといえるか

ですが、

日本年金機構が審査して決めます。

実態の審査に対しては、事実を証拠立てる書類を提出する必要があります。

・健康保険の被扶養者になっていた
・給与に扶養手当が加算されており、その対象になっていた
・挙式、披露宴等が行われている
・葬儀の喪主になった
などです。

生計同一関係については、

・住民票上同一世帯に属しているとき
・住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
・住所が住民票上異なっているが、現に起居を共にしている

別居であれば、別居に止むを得ない事情があると認められること

生活費や療養費等の経済的な援助が行われていること、定期的に音信、訪問が行われていること

などです。

裁判例

裁判例としては、別府市の女性が内縁関係にあった男性の遺族年金を受給できないのは違法として、国を相手に不支給処分の取り消しを求めたことがあります。一審では棄却されました。

女性は、
1.「愛情を誓い共同生活を約束した男性署名の契約証」がある。
2.旅行など公の場にも同伴して夫婦として扱われていた。と主張したのですが、
判決は、男性が戸籍上の妻と積極的に離婚しようとする意図があったとは言い難く、原告は配偶者に該当しないとの理由で訴えを退けたようです。

また、長野の裁判ですが、妻との間は別居状態で夫婦関係は形骸化していたとして、「女性との関係は相当程度安定しており、配偶者に当たると認めるのが相当だ」と判断したものがあります。日本年金機構は不支給と決定したのですが、裁判所から認められたものです。

一概には言えませんが、本妻との関係が破たんしていて、内縁の方と一緒に夫婦のように暮らしていた、など、実質的にどうかということになるようです。

遺族年金は、半分ずつ分けるというわけにはいかず、支給決定された方が全部受け取ります。証拠の揃え方で違ってくるようですから、事前準備がとても重要です。


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