極北の極寒の地では、エンジンを止めれば再び動かすことが難しゆえ、一晩中動かし続けるという話を聞き及んだ。果たして真のことであろうか。
拙者が若かりし頃、今より半世紀前のことでござるが、冷え込んだ朝にはバッテリーが弱まり、エンジンが動かぬことが時折あった。拙者は常にブースターケーブルを車に備え、困っておる者に己のバッテリーを貸し与えておったものじゃ。己が世話になった記憶はござらぬ。
その後、バッテリーの性能が上がり、ブースターケーブルの出番もなくなって、そのうちどこへ失せたか無くなってしもうた。
似たようなことをもう一つ思い出した。車を引くための牽引ロープじゃ。昔は今よりずっと道の除雪が行き届いておらなんだ。どうにかするとスタックし、動けなくなることは日常茶飯事であった。
そのような時に備え、牽引ロープを車に常備しておったのじゃ。これも、己が助けられた覚えはないが、幾度となくスタックした車を引いて助けてやったことは覚えておる。
……という次第じゃが、己がしくじったことがなく、常に人助けをしておったというのは、どうも不自然な気がいたす。己に都合良く記憶がすり替わっておるのかもしれぬな。
さて、今日の天気じゃが、昨夜の予報では一日中雪マークであった。されど、実際には雪も雨も降らず、曇り空の穏やかな一日で終わったのは幸いであった。
