遺言について友人に相談してみた
自筆証書遺言とは
私: 実は最近、そろそろ遺言のこと考えないとなーと思ってさ。でも、何から手をつけていいか全然わからなくて、詳しいお前なら教えてくれるかなと思って連絡したんだ。
友人: 遺言って、いきなり言われると構えちゃうけど、考えておくのはいいことだよね。それで、どんなことから知りたいんだ?
私: まずは「自筆証書遺言」っていうのが一番一般的なんだよね? それがどういうものなのか、基本的なことを教えてほしいな。
友人: うん、その通り。遺言にはいくつか種類があるんだけど、一番手軽なのが自筆証書遺言だね。これはね、簡単に言うと、遺言したい人が自分で遺言書を書いて、それに印鑑を押すだけなんだ。民法にもちゃんと規定があってね。
私: へえ、自分で書くだけでいいんだ。法律で決まってるんだね。
友人: そうそう。民法第968条に「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」って書いてあるんだ。このルールを守れば、法的に有効な遺言書になるんだよ。
私: なるほど。
友人: 大事なポイントがいくつかあるよ。
作成上の注意点
友人: まず一番大事なのは、全部自分で手書きするってこと。「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し」って条文にもある通り、ワープロやパソコンで打ったり、誰かに代筆してもらったりするのはダメなんだ。
私: え、パソコンで打ってプリントアウトしたものは無効ってこと? 録音とかビデオもダメなんだ。
友人: そうなんだ。一部例外的にパソコン作成が認められるケースも最近は出てきてるみたいだけど、基本的には全部手書きが原則。だから、間違ってパソコンで作成しちゃうと、せっかく書いても無効になっちゃうから注意してね。
私: げ、それは知らなかった。危なかったー。
友人: 次に、印鑑を押すこと。これも大事だよ。印鑑はね、必ずしも実印じゃなきゃダメってことはなくて、認印でも有効なんだ。中には拇印でも有効って判決もあるみたいだけど、トラブルの元になることもあるから、できるだけ実印を使った方が確実だよ。
私: なるほど、実印がベストってことね。あと、もし書き間違えちゃったらどうするの?修正テープとかはダメだよね?
友人: その通り。書き間違えた時に訂正するにもルールがあるんだ。これも民法に決まっててね。「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」ってなってるんだ。
私: うわ、なんかややこしいな。普通の書類みたいに二重線引いて訂正印、ってわけにはいかないんだ。
友人: そうなんだ。ちょっと特殊なルールだから、もし訂正箇所が出ちゃったら、どうやればいいか調べてからやった方がいいよ。最悪、また書き直した方が確実かもしれないね。
私: ふーむ、奥が深いな。書いた遺言書は、どうすればいいの?封筒とかに入れるのかな?
友人: そうだね、封筒に入れて封印するのが基本だよ。封筒はどんなものでも大丈夫。遺言書を中に入れたら封をして、遺言書に押した印鑑と同じ印鑑を、封をした境目に押すんだ。
私: 封筒の書き方とかもあるの?
友人: 封筒の表に「遺言書」って書いて、裏には「この遺言書は開封せずに家庭裁判所で検認の手続きをすること」って記載するといいよ。それから作成日と署名捺印も忘れずにね。封筒に入れてなかったり、封印してなかったりしても、必ず無効になるわけではないんだけど、ルール通りにしておく方が安心だよね。
自筆証書遺言のメリットとデメリット
私: そもそも自筆証書遺言ってどんなメリットがあるの?
友人: 一番のメリットはね、作成がすごく簡単なことだよ。費用がかからないし、公正証書遺言みたいに証人も必要ないんだ。公証役場に行く手間もないしね。他の遺言と比べても、有効性で劣るってことはないから、手軽に作れるのが魅力だね。
私: なるほど、手軽に作れるのは助かるね。じゃあ、逆にデメリットはあるの?
友人: もちろんデメリットもあるよ。
友人: まずは不備が出やすいこと。一般の人は遺言書の専門知識がないから、日付を書き忘れたり、内容に不備があったりすることが結構あるんだ。そうすると、せっかく書いたのに無効になっちゃうケースもある。
私: 無効になっちゃうと、どうなるの?
友人: 法的には無効って言っても、相続人たちが「多少不備があっても故人の意思を尊重しよう」って合意すれば、その内容通りにできる場合もあるよ。でも、揉める原因になる可能性もあるから、やっぱり完璧に作っておくに越したことはないね。
私: ちゃんと作っても、出てこなかったら意味ないよね。どこかに保管しといた方がいいのかな?
友人: そうなんだ。自分で保管していると、せっかく書いても、遺言書が見つからないまま「ないもの」として扱われちゃうこともあるんだ。だから、最近できた法務局の保管制度を利用して、そこに預けておくと安心だよ。家族にも預けてあることを伝えておくとさらにいいね。
私: 法務局に預けられるんだ。それは便利だね!
友人: あと、もう一つ気をつけなければならないことがあって、法務局に預けてない自筆証書遺言が見つかったら、すぐに開けずに家庭裁判所で「検認」っていう手続きを受けなきゃいけないんだ。この検認をしないと、せっかくの遺言書が有効にならないんだよ。
私: えっ、勝手に開けちゃダメなんだ? 検認って面倒だね。
友人: そうなんだ。でも、さっき言った法務局の保管制度を利用していれば、この検認は不要になるんだ。だから、法務局に預けるのが一番おすすめだよ。
法務局の保管制度と専門家への相談
私: その法務局の保管制度って、具体的にはどうやるの?
友人: 自分で法務局に行って保管を申請するんだ。代理人じゃなくて、必ず本人が行かなきゃいけないよ。法務局は遺言書の中身を確認するから、封をしないで提出することになるんだ。
私: なるほどね。サンプルとかってあるの?
友人: うん、一般的な遺言書のサンプルはこんな感じだよ。
友人: (遺言書のサンプルを見せながら)
遺言書
遺言者〇〇〇〇は次の通り遺言する。
1.妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)には以下の不動産を相続させる。
(1)土地
所在
地番
地目
地積 〇平方メートル
(2)建物
所在
家屋番号
種類
構造
床面積1階 〇平方メートル
2階 〇平方メートル
2.長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)には以下の預金を相続させる。
〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の普通預金
口座番号〇〇〇〇〇〇
3.長女〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)には以下の預金を相続させる。
〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の普通預金
口座番号〇〇〇〇〇〇
4.その他遺言者に属する一切の財産は、妻〇〇〇〇に相続させる。
5.遺言執行者として次の者を指名する。
住所
氏名
6.付言事項
私がもしものときは遺言執行者に指名した〇〇さんに連絡をとってください。委細は説明してあります。子供たちは協力をしてお母さんが困らないように助けてあげてください。
令和〇年〇月〇日
東京都〇〇区〇町〇丁目〇番〇号
遺言者 〇〇〇〇印
私: ああ、なるほど。具体的に書くことがたくさんあるんだね。自分で全部やろうとすると、やっぱり不安だな。
友人: そうだね。遺言については、素人判断で進めない方がいい。特に複雑なケースだと、後々揉める原因になりかねないからね。専門家としては、司法書士や弁護士がいるから、多少お金がかかっても、そういう専門家のアドバイスを受けた方が断然安心だよ。
私: そっか、やっぱり専門家か。色々教えてくれて本当にありがとう!おかげで何をすればいいか、だいぶ見えてきたよ。
友人: どういたしまして。これで少しは不安が解消されたかな? また何かあったら聞いてくれていいからね。
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