相続の第一段階 相続人を確定する

相続

法定相続人って誰?

甥っ子: ねぇ叔父さん、この前、相続の話してくれたじゃない?あれでちょっと疑問に思ったんだけど、そもそも「法定相続人」って、誰のことなの?亡くなった人の財産って、誰が引き継ぐって決まってるの?

叔父さん: おう、いい質問だな。遺産を誰が引き継ぐかは、民法っていう法律でちゃんと決まっているんだ。その法律で定められた、遺産を相続できる人のことを「法定相続人」って呼ぶんだよ。

甥っ子: へぇ!じゃあ、誰でもなれるわけじゃないんだ。優先順位とかもあるの?

叔父さん: もちろん、あるぞ。順番に説明していくな。

最も優先される「配偶者」

叔父さん: まず、一番最初に考えるのが配偶者、つまり、亡くなった人の夫や妻だな。もし配偶者がいれば、その人は他の誰よりも優先して法定相続人になるんだ。

甥っ子: じゃあ、籍を入れてない、いわゆる「内縁の妻」とかは?

叔父さん: いいところに気づいたな。内縁関係のパートナーは、残念ながら法定相続人にはなれないんだ。でも、もし遺言があれば遺産を受け取れることもあるし、場合によっては「特別縁故者」として認められて財産をもらえるケースもあるけどな。

甥っ子: そうなんだ。じゃあ、もし配偶者しか相続人がいなかったら?

叔父さん: その場合は、配偶者だけが唯一の法定相続人になる。もし配偶者以外にも相続人がいたら、配偶者と他の相続人の両方が法定相続人になるんだ。

第一順位:子ども

叔父さん: 配偶者はちょっと別格として、まず第一に相続人になるのは、亡くなった人の子どもたちだ。配偶者がいて子どももいれば、配偶者と子どもの両方が法定相続人になるし、配偶者がいなければ子どもだけが法定相続人になる。

甥っ子: じゃあ、配偶者と子どもが相続人になったら、取り分はどうなるの?

叔父さん: その場合は、配偶者と子どもで半分ずつ(2分の1ずつ)分け合うことになる。もし子どもが何人かいたら、その子どもの分の半分を、みんなで均等に分けるんだ。

甥っ子: 養子とか、前妻の子どもとかはどうなるの?

叔父さん: それも大事なポイントだ。

養子縁組をした子どもは、自分の実の子と同じように扱われるから、法定相続分も変わらない。
でも、配偶者の「連れ子」で、養子縁組をしていない場合は、その子には相続権はないんだ。
あと、亡くなった人が認知した子どもも相続権が認められるぞ。これを「非嫡出子」って言うんだけど、結婚してる夫婦の間に生まれた子ども(嫡出子)と同じだけ相続分がある。
前妻の子どもと後妻の子どもがいる場合も、両方とも法定相続人になって、取り分は同じだ。

第二順位:親

叔父さん: 次に、もし亡くなった人に子どもや孫がいなかった場合、第二順位の法定相続人は親になる。

甥っ子: じゃあ、配偶者はいるけど、子どもも孫もいなくて、親がまだ生きてたらどうなるの?

叔父さん: その場合は、配偶者と親が相続人になる。この時の取り分は、配偶者が3分の2、親が3分の1だ。もし両親が二人とも生きていたら、親の分の3分の1をさらに二人で分けることになる。

甥っ子: もし親も亡くなってたら?

叔父さん: 親が二人とも亡くなっている場合は、その親、つまり亡くなった人の祖父母がまだ生きていれば、その祖父母が相続人になるんだ。そして、配偶者も子どもも孫もいない場合は、親だけが相続人になることもある。

第三順位:兄弟姉妹

叔父さん: そして、もし子どもも孫も、親も祖父母も誰もいない場合、最後の第三順位が兄弟姉妹になる。

甥っ子: 兄弟姉妹も相続人になれるんだ!

叔父さん: そうだ。配偶者もいなくて兄弟姉妹だけなら、兄弟姉妹が全ての財産を相続することになる。もし配偶者がいる場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の取り分だ。兄弟姉妹が何人かいたら、その兄弟姉妹の分の4分の1を、みんなで均等に分けるんだ。

「代襲相続」って何?

甥っ子: あのさ、もし相続人になるはずの人が、すでに亡くなってたらどうなるの?

叔父さん: それが、「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という制度だ。相続人になるはずだった人が、相続が始まるよりも前に亡くなっていた場合、その亡くなった人の子どもや孫が代わりに相続できるんだ。

甥っ子: へぇ!じゃあ、父親が亡くなる前に、長男が先に亡くなってたら、その長男の子どもが相続人になるってこと?

叔父さん: まさにそうだ。その場合、その長男の子どもが代襲相続人になる。代襲相続人の取り分は、亡くなったはずの人が受け取るはずだった分と同じになるんだ。もし代襲相続人が複数いる場合は、その取り分をみんなで均等に分けることになる。

甥っ子: 代襲相続って、どこまで続くの?

叔父さん: いい質問だ。

亡くなった人の子どもや孫、ひ孫などの「直系卑属(ちょっけいひぞく)」は、どこまでも代襲相続人になれる。例えば、子どもも孫も亡くなっていたら、ひ孫が代襲相続人になるんだ。
兄弟姉妹の場合は、兄弟姉妹の子ども、つまり甥や姪までは代襲相続人になれる。でも、甥や姪の子ども、つまり「大甥(おおおい)」や「大姪(おおめい)」は代襲相続できない。兄弟姉妹の代襲相続は一代限りなんだ。

甥っ子: 親が先に亡くなってた場合は?

叔父さん: 親が先に亡くなっていて、祖父母がまだ生きていれば、祖父母が親の代わりに相続人になる。これは厳密には代襲相続とは言わないんだけど、同じような考え方だ。さらに祖父母もいなければ曾祖父母へとつながっていく。

甥っ子: 相続権を失った人(相続欠格や廃除された人)の子どもはどうなるの?

叔父さん: そういう場合でも、その人の子どもには代襲相続が適用されるぞ。ただし、自分で相続を放棄した人の子どもは、代襲相続できないから注意が必要だ。

甥っ子: なんか、複雑だね。色んなケースがあるんだなぁ。

叔父さん: そうなんだ。特に、子どもがいなくて親も亡くなっていて、兄弟姉妹も亡くなっているようなケースだと、甥や姪がたくさんいて、しかもあちこちに散らばってて付き合いがないことも多いから、遺産分割協議がすごく大変になることもあるんだ。

相続人が行方不明

相続人が行方不明であっても、生きている限りは相続の権利を持っているためその人を除いて遺産協議を進めることはできません。

相続人がいない場合

身寄りがなく相続人がいない場合があります。相続人が一人も見つからないときは、財産は国のものになります。

相続人の中に未成年がいるとき

法定相続人の中に未成年者がいるときは、特別代理人を必要とする場合があります。

相次いで亡くなったときの相続

父親が亡くなってまもなく母も後を追うように亡くなってしまった。このように、一つの相続手続きが終わらないうちに、二つ目の相続手続きが加わることを「数次相続」または「二次相続」といいます。

法定相続人は戸籍で調べる?

甥っ子: ねぇ叔父さん、法定相続人の順位とか教えてもらったじゃない?あれで思ったんだけど、じゃあ、実際に「この人が相続人だよ」って、どうやって確認するの?「私たちだけです!」って言っても、それだけじゃダメなの?

叔父さん: おう、そこも大事なところだな。たとえ「相続人は私たちだけだ」って思っていても、法律的にはそれが正しいってことを証明しなきゃいけないんだ。だから、ちゃんと法定相続人を調査する必要があるんだぞ。

甥っ子: え、でも、家族はみんな分かってるよ?それでも調べるの?

叔父さん: そうなんだ。たとえ「分かりきっている」って思っても、実は他に相続人がいるかもしれないっていう前提で調べるから、省略することはできないんだよ。

「戸籍」をたどって相続人を探す

叔父さん: じゃあ、どうやって調べるかって言うと、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を取り寄せて確認するんだ。

甥っ子: 戸籍謄本?「除籍謄本」とか「改製原戸籍」って書いてあるけど、それも戸籍ってこと?

叔父さん: そうだ。戸籍って、昔の形式だったり、結婚して抜けたりすると、呼び方が変わるんだけど、基本的には全部「その人の記録」が載ってるものだ。これを全部集めるんだよ。

甥っ子: どうやって集めるの?

叔父さん: まず、亡くなった人の一番新しい本籍地から始めるんだ。そこから、一つずつ古い本籍地をさかのぼって、出生までの戸籍を、それぞれの市町村役場に請求する必要があるんだ。

甥っ子: え、本籍地って変わることがあるの?

叔父さん: ああ、結婚したり、引っ越したりすると、本籍地を移すことがあるからな。だから、本籍地が何回か変わっていれば、複数の役場から戸籍を取り寄せなきゃいけないんだ。遠い役場だと、申請書と身分証明書のコピー、あと定額小為替っていうお金の代わりになる券と、切手を貼った返信用の封筒を同封して、郵送で送るんだよ。

甥っ子: うわー、それってすごく手間がかかりそうだね…。

叔父さん: その通りだ。取り寄せた戸籍謄本をじっくり読んで、子どもの数や名前、養子がいないかなんかを調べるんだ。もし子どもがいない場合は、さらに父母や祖父母、兄弟姉妹の戸籍までさかのぼって調べていくんだぞ。

新しい相続人が見つかったら?

甥っ子: もし、そうやって調べていくうちに、今まで知らなかった新しい相続人が見つかったらどうするの?

叔父さん: もちろん、その人も相続人になるから、その戸籍謄本と一緒に戸籍の附票(ふひょう)っていうのを取り寄せるんだ。戸籍の附票には住所が載ってるから、それで相手の住所を把握して連絡を取るんだよ。

甥っ子: 大変だけど、ちゃんと調べるんだね。もし、自分でやるのが大変だったら、誰かに頼めるの?

叔父さん: もちろん頼めるぞ。こういう戸籍の調査は、司法書士なんかに依頼することができる。費用は少しはかかるけど、自分で苦労して集めるよりは、ずっとスムーズに手に入れてくれるぞ。

甥っ子: なるほど!法定相続人をちゃんと確定するのって、すごく大事で、しかも結構大変な作業なんだね。戸籍を全部たどるなんて、初めて知ったよ。叔父さん、今回も本当にありがとう!

叔父さん: どういたしまして。相続っていうのは、見落としがないように、きちんと手順を踏むことが何よりも大切なんだ。また何か疑問に思ったら、いつでも聞いてくれよ。

法定相続分によらないこともできる

遺言書があるとき

遺言書があると、遺言書で指示されたことが、法定相続分よりも優先されます。ただし、遺留分という最低限残さなければならない分があります。

遺産分割協議で決めたとき

遺言がなければ、誰がどれだけ相続するかを、相続人全員の合意で決めることができます。この場合も、遺留分は守らなければなりません。

相続欠落や相続廃除になっているとき

法定相続人であっても、非行などがあれば相続人から除かれて相続できなくなることがあります。

代表相続人とは

相続人が複数のときは代表相続人を指定することがあります。所有権移転登記の前に故人に代わって固定資産税の支払いなどにあたります。


総目次のページ相続について調べたこと>このページ

タイトルとURLをコピーしました