行方不明の相続人がいたら?
甥っ子: ねぇ、叔父さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。もしね、相続するってなった時に、法定相続人の一人がずっと連絡取れないとか、どこにいるかも分からないってなったら、どうなるの?
叔父さん: おう、いい質問だな。そういうケース、実際にあるんだよ。まず最初にやるべきことは、とにかくその行方不明の相続人を探すことだ。
甥っ子: え、でも全然見つからなかったら?
叔父さん: そうなんだ。たとえどこにいるかわからなくても、その人が生きてる限りは相続人としての権利を持ってるから、その人抜きで遺産をどうするか話し合う(遺産分割協議って言うんだけどな)ことはできないんだよ。だから、まずは必死に探すんだ。
甥っ子: じゃあ、いくら探しても全然見つからないってなったら、どうするの?ずっとそのままなの?
叔父さん: いや、そんなことはない。どうしても見つからない場合には、法的な対処法がいくつかあるんだ。主なものとしては、この2つを覚えておくといい。
失踪宣告の申し立て
叔父さん: まず一つは、失踪宣告を申し立てる方法だ。
甥っ子: シッソウセンコク?何それ?
叔父さん: うん。もし相続人が何年も前に家を出てから音沙汰がないとか、事故や災害に遭って生きてるかどうかも全く分からないような場合だな。こういう時に、利害関係人(つまり、相続人とか、その人のお金で困るような立場の人たちだな)が家庭裁判所に「この人はもう亡くなっていることにしてほしい」ってお願いするんだ。
甥っ子: へぇ!それで、もし認められたらどうなるの?
叔父さん: 家庭裁判所が失踪宣告を出すと、その人は法律上、亡くなったものとして扱われるんだ。そうすると、その時点から相続が始まることになる。
甥っ子: 亡くなったことになるってすごいね!どんな時に失踪宣告が出るの?
叔父さん: 主に二つのケースがある。
一つは、行方不明になってから7年間、生死が不明な場合。二つ目は戦争に行ったり、船が沈没したりとか、命に関わる危ない状況に遭ってから1年間、生死が不明な場合だ。
甥っ子: これは、誰でも申し立てられるの?
叔父さん: いや、あくまで利害関係者が、行方不明者が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に申し立てるんだ。申し立てがあると、裁判所はその人の捜索を官報っていう国の広報誌みたいなものに載せて、広く情報を求めるんだよ。
甥っ子: なるほどねぇ。もし、失踪宣告が出た後にその人がひょっこり現れたらどうなるの?
叔父さん: それも面白い質問だな。もし生きて現れて、失踪宣告を取り消してほしいって申し立てて認められれば、その人の相続に関する権利も復活するんだ。そうすると、場合によっては相続をもう一度やり直さなきゃいけないってこともあるんだよ。ちょっと面倒なことになるな。
不在者財産管理人の選任
叔父さん: もう一つの方法は、不在者財産管理人という人を選んでもらうことだ。
甥っ子: フザイシャザイサンカンリニン?それもまた難しそうな名前だね。
叔父さん: そうだな(笑)。これはね、行方不明の相続人に代わって、その人の財産を管理してくれる人のことなんだ。選ばれるのは、たいてい弁護士さんとか司法書士さんだな。
甥っ子: その人が、行方不明の人の代わりに遺産の話に参加してくれるってこと?
叔父さん: その通りだ。この管理人は、家庭裁判所にその人の財産の状況なんかを報告しながら管理してくれる。そして、遺産分割協議に参加するには、家庭裁判所に「権限外行為の許可」っていうのを申請して、認められれば参加できるんだ。
甥っ子: 許可がないと参加できないんだね。もし参加して、遺産分割協議がまとまったらどうするの?
叔父さん: その管理人が、行方不明の相続人の代わりに署名や捺印をするんだ。ただし、裁判所は、行方不明の相続人が不公平な扱いを受けないように、法定相続分(法律で決められた最低限の取り分だな)よりも少ない遺産分割案だと、原則として許可しないようになっているから安心だな。
甥っ子: へぇ、ちゃんとその人の権利を守ってくれるんだね!これって、誰が申し立てるの?
叔父さん: これも失踪宣告と同じで、相続人などの利害関係者が、行方不明者が住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に「不在者財産管理人を選んでほしい」って申し立てるんだ。申し立ての時に、財産を管理してもらうための予納金っていうお金が必要になる場合もあるから、そこは注意が必要だな。
甥っ子: なるほどねぇ。行方不明の人がいても、ちゃんと法的な道があるんだね。勉強になったよ、叔父さん!ありがとう!
叔父さん: どういたしまして。相続ってのは、いざって時に色々な問題が出てくるもんだからな。困ったことがあったら、またいつでも聞いてくれよ。
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