2024年11月29日

日記

拙者、何年かに一度ばかり、眼が赤くなることがござる。
初めてそのようなことが起こったのは、もう何十年も前のことであった。

ある朝、右の白目が真っ赤に染まっておった。
こりゃ尋常ならざると、鏡をのぞいて肝を潰した。
いわゆる充血とは様子が異なり、眼そのものが出血しておるように見えたのである。

痛みも痒みもなかったが、放っておくには不安が過ぎた。
仕事を早退して眼科に駆け込んだ。
心中では「これは眼底出血というものではあるまいか」と思うておった。
もっとも、そのころは「眼底出血」という言葉の意味すら、はっきりとは知らなんだのだが。

診察の折、医師は「瞳孔を開きますよ」と言い、薬をさして眼の奥を覗き込んだ。
少しして、穏やかにこう申された。
「ご心配なく、よくあることですよ。白目の表面にある細い血管が切れただけです。治療の必要はありません。自然に治ります。」

その言葉を聞いて、ようやく胸をなでおろしたものである。

その後、赤みは数日で引き始め、気がつけば元の白目に戻っておった。
あれ以来、同じようなことが何度かあったが、もはや驚かぬ。
「おお、またか」と、静かに時の流れに任せておる。


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