先日、バスに乗ろうとした折のこと。私の前に並んでおった御仁が、入口の段差に足を取られ、つまずいて倒れ込みた。
「これは痛かろうな……」と胸中に思い、「大丈夫であるか」と声をかけたのだが――これは愚問であった。「大丈夫か」と問われれば、大概の者は「大丈夫である」と答えるもの。今回もまた、まさにその通り。件の御仁も、席に腰を下ろされた後、黙って脚を撫でておられた。きっと痛みを堪えておられたのでござろう。
それを見て、私もかつての出来事を思い出した。数十年も前のことだが、空の旅へ向かう途中、空港の連絡バスに乗ろうとした折、疲労のせいか足が十分に上がらず、段にてつまずき、向こう脛をしたたかにぶつけたことがあった。
このようなことを繰り返せば、下手をすれば骨が折れ、入院の身ともなりかねぬ。ゆえに、これより先は、バスに乗り込む際は、漫然と足を運ぶことなく、しっかと段を見据え、しっかと足を上げて乗り込むこと――その教えを胸に刻みた。
さて、今朝方は、わずかに雪が降っておったが、ほどなく止み、静かな一日となった。
