2025年5月15日 木曜日

日記

あれは、ついこの間のことと申しても、世が騒がしゅうなった疫病――「コロナ」とやらが広まった折の話にござる。

その折には、「不要不急の外出は控えよ」と、まことにものものしきお触れが世に出され、町も人もすっかり息をひそめるようであった。

かくなる状況ゆえ、拙者らも、顔を突き合わせての相談ごとはなりませず、文(ふみ)や電信(でんしん)なるもの――そなたらの言う「メール」や「電話」――にて済ませたり、さらには「ズーム」とかいう不思議な道具を用いて、遠くの者同士が鏡のように顔を映し出し、談義を致すこととなった。

会議と申す場も、文書だけで済ませるものが増え、酒肴を交えた懇親の席などはすべて取り止め。やむなく顔を合わせる際にも、皆が皆、面(おもて)を覆う布を掛け――いわゆる「マスク」なるものを着けて――なるべく無言で居るばかり。いやはや、何とも味気なき世であった。

されど、ふと省みれば、その「不要不急」とやらの名の下に、多くの所作・儀礼が省かれた。あれも不要、これも不要と、つらつら考えるに、人の営みというもの、実は多くが「急がぬ・要らぬ」ことにて成り立っておったのやもしれぬ。

今となっては、かの疫病のことも、まるで遠い昔話のごとく、人々の口の端にも上らず、元の世に戻りつつあるが――それにしても、あの一件は一体、何であったのか……まこと、夢か幻か、あるいは天の戒めであったのやもしれぬのう。

ここ数日、空模様はまことに見事。いよいよ爽やかなる春が来たかと思いきや、どうにも暑うござる。なんと本日の気温、二十八度にもなったとか。春というより、もはや初夏の趣き。歳を取ると、暑さが身にこたえるわい……。


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