拙者が用いておる、「ゆうえすびい記憶札」(USBメモリ)が一つ、どうにも見当たらぬ。
置き所は、いつも決まっており申すが、いざ探してみれば、その場に影も形も見えぬ。考えられる場所は限られておるゆえ、そこかしこ、念入りに探しはしたが、やはり出でず。
昨日、こんびにえんすなる商家にて複写機を借りしときに持って出たことは確かであるので、そこに置き忘れたやもしれぬ、とは一瞬思いはしたが、その複写機は用を済ませしのち、「印し物は持ったか」「前金の札(プリペイドカード)は持ったか」「記憶札は持ったか」と、毎度念押しするのでござる。それを律儀に確かめるは、わが習いとなっておる。
また、帰宅すれば、記憶札は所定の箱へ戻すを常とし、うっかり落とすも忘れるも、その折に気づくはず――と、かように信じておった。
ゆえに、どう考えても、屋敷のどこかにはあるはず、と、己が記憶の衰えを疑いつつ、胸のうち穏やかならずおった。
されど、翌日になり、前日に羽織った防風の羽織(ヤッケ)の懐を探れば……ありましたぞ、記憶札。なんと、拙者、所定の場所へ納めたつもりで納めず、また羽織の懐も、浅くしか探らなんだ。かように、二重の不始末、我ながら呆れるほかなし。
空模様は、いかにも降りそうであったが、幸いにも一滴も落ちることなかった。
2025年5月23日ーこのページー2025年5月25日