作り方
柿酢(かきす)の作り方を紹介します。初めての方でも比較的簡単に挑戦できます。
材料と道具
- 材料: 完熟した柿(甘柿・渋柿どちらでも可)
- 熟し過ぎて柔らかくなった柿や傷のある柿でも大丈夫です。
- 道具:
- 広口のガラス瓶またはカメ(熱湯消毒やアルコール消毒をして清潔にしておく)
- 布(ガーゼやさらし布など)または目の細かいネット
- 紐またはゴム(蓋代わりの布を固定するため)
- 木べらやマッシャー(柿を潰したりかき混ぜたりするため)
柿の仕込み
- 柿の準備:
- 柿は洗わずに、乾いた布やペーパータオルで軽く拭いてホコリや汚れを落とします。
【ポイント】 柿の皮の表面には、発酵に必要な野生の酵母菌や酢酸菌が付いているため、洗いすぎると発酵しにくくなります。洗う場合でも、軽くすすぐ程度に留め、傷んだ部分を切り落としましょう。 - ヘタを切り落とします。
- 柿は洗わずに、乾いた布やペーパータオルで軽く拭いてホコリや汚れを落とします。
- 瓶に詰める:
- 清潔な瓶に柿を入れます。この時、瓶の7~8割程度を目安に詰めます(発酵して量が増えるため)。
- 柿を潰す:
- 木べらなどで柿を潰し、果汁が出やすいようにします。柔らかい柿であれば、そのまましばらく置くと自然に潰れてきます。
発酵(アルコール発酵から酢酸発酵)
- 蓋をする:
- 瓶の口に布やガーゼを被せ、紐やゴムでしっかりと留めます。
【注意】 密閉してしまうと、発酵で発生するガスで蓋が飛んだり破裂したりする危険があるため、必ず空気が通るようにしておきます(酢酸菌は好気性菌なので、空気に触れる必要があります)。同時に、コバエなどの虫が入らないように目を細かくしっかりと固定します。
- 瓶の口に布やガーゼを被せ、紐やゴムでしっかりと留めます。
- 常温で保管・かき混ぜる:
- 暖房の効いていない涼しい場所(理想的には15~25℃程度の常温)で保管します。
- 1日1回程度、木べらなどで底からかき混ぜて、空気に触れさせ、全体の発酵を促します。
【変化の目安】- 数日後: ぷくぷくと泡が出始め、アルコール発酵が始まります(果物のアルコールのような匂いがすることがあります)。
- 約1週間〜1ヶ月: 泡が減り、次第に酸っぱいお酢の匂いに変わってきます(酢酸発酵)。液体の表面に白い膜(酢酸菌の膜:産膜酵母)ができることがあります。これはカビではなく、発酵に関わった酵母の一種で害はありません。風味を損なう場合があるため、見つけたら取り除いてください。
- 完成の目安:
- かき混ぜても泡が出なくなり、強い酸味(お酢の味)になったら発酵が完了です。仕込みから約1〜3ヶ月が目安ですが、気温や環境により異なります。
- 柿酢のアルコール度:
- 完成した柿酢にはアルコールは含まれていません(または、ごく微量にしか残っていません)。柿酢の発酵工程は、「アルコール発酵」と「酢酸発酵」の2段階で進行します。
- アルコール発酵(第一段階):最初に、柿の糖分(ブドウ糖など)が酵母菌の働きによって分解され、アルコールと炭酸ガスに変化します。この段階では、液体は柿酒(もろみ)のような状態になっており、アルコール分が含まれています(通常、数%程度)。
- 酢酸発酵(第二段階):次に、液体に空気を触れさせることで、酢酸菌が活動を始めます。この酢酸菌が、アルコール発酵で生成されたアルコール(エタノール)を分解し、酢酸と水に変化させます。発酵が完了した時点とは、この酢酸菌による発酵が十分に終わり、アルコール分がほとんどすべて酢酸に変換された状態を指します。したがって、市販されている一般的な醸造酢と同様に、家庭で作った柿酢も、発酵が完了していればアルコール分は食品衛生法上のアルコール基準(酒類としての規定)を下回ることになります。
濾(こ)す
- 濾過(ろか):
- 発酵が完了したら、ざるの上に布(さらし布など)を敷いて、時間をかけてゆっくりと液体を濾します。
- 澄んだお酢にするため、一晩程度かけて自然に濾すのがおすすめです。
保存・熟成
- 殺菌と保存:
- 濾した柿酢を密閉できる瓶に入れ、すぐに使うことができます。
- 長期保存したい場合は、65〜70℃程度の湯煎に10分ほどかけ、熱を冷ましてから蓋をすると殺菌できます。保存に使う瓶は、必ず煮沸消毒やアルコール消毒をして、完全に乾燥させてから使用してください。殺菌処理をした後の柿酢は、しっかりと蓋をして密閉し、冷暗所(戸棚の中など)で保存します。
- 熟成:
- 濾した柿酢を冷暗所で1年、2年と熟成させると、ワインなどと同じように時間が経つことで味がまろやかになり、風味が増します。時間の経過とともに色が濃くなることがありますが、これは熟成によるもので、品質には問題ありません。
- 保存期間:
- 手作りの柿酢は、適切な処理と保存をすれば非常に長く保存できます。基本的には、お酢自体が強い殺菌力を持っているため、品質が急激に劣化する心配は少ないです。
- 未殺菌 (生きた状態):常温で6ヶ月 〜 1年、酢酸菌が生きており、熟成が進みます。夏場など温度が高い時期は冷蔵庫保存が安心です。
- 殺菌処理済み:常温で1年 〜 数年、加熱により発酵が止まり、長期保存に向きます。市販の酢に近い状態です。
柿酢の利用法
柿酢は、一般的な穀物酢や米酢に比べて酸味がまろやかでフルーティーな甘みがあるのが特徴です。そのため、料理だけでなく、ドリンクとしても非常に使いやすいお酢です。
主な利用法を「飲む」と「料理に使う」の2つに分けてご紹介します。
飲む(ドリンクとしての利用)
柿酢のまろやかさや甘みは、健康ドリンクとして取り入れるのに最適です。
- 柿酢サイダー/水割り:
- 柿酢を水や炭酸水(サイダー)で割る、最もポピュラーな飲み方です。
- 目安: 柿酢大さじ1杯に対し、水や炭酸水150ml程度。お好みでハチミツを加えても美味しく飲めます。
- ポイント: 疲労回復や食欲増進に良いとされています。
- 柿酢ミルク:
- 牛乳や豆乳に柿酢を混ぜます。
- ポイント: 柿酢の酸で牛乳のタンパク質が固まり、とろみがついて飲むヨーグルトのような口当たりになります。
- 柿酢スムージー:
- 小松菜やバナナ、豆乳などを使ったグリーンスムージーに大さじ1杯程度加えると、すっきりとした爽やかな飲み口になります。
- 柿酢甘酒:
- 温かいまたは冷たい甘酒に柿酢を少し加えることで、アミノ酸や栄養豊富な健康ドリンクになります。
料理に使う(調味料としての利用)
酸味が穏やかなため、和食・洋食問わず、通常の酢の代わりに幅広く使えます。
1. 合わせ酢・ドレッシング
- ドレッシング: オリーブオイル、塩、胡椒に柿酢を混ぜるだけで、フルーティーでまろやかなドレッシングが完成します。塩麹を加えても旨味が増します。
- すし酢: 柿酢の自然な甘さを活かして、すし飯や混ぜ寿司の合わせ酢に使うと、さっぱりとして深みのある味わいになります。
- 特に、柿酢の塩鮭の混ぜ寿司などは、柿酢の風味が活かされます。
- 和え物・酢の物: 紅白なますやキュウリとワカメの酢の物など、酢の物に使うと、砂糖を減らしてもまろやかな酸味に仕上がります。
2. 漬け込み・マリネ
- ピクルス: 野菜(きゅうり、大根、玉ねぎなど)を柿酢に漬け込むと、さっぱりとして上品な酸味のピクルスになります。残った漬け汁はドレッシングにも再利用できます。
- マリネ: 魚介類(エビ、タコなど)や肉類をマリネする際に使うと、素材の臭みを抑えつつ、優しい風味をつけられます。
- 玉ねぎの柿酢漬け: スライスした玉ねぎを柿酢に漬け込むと、辛みが抜け、料理の付け合わせに最適です。
3. その他
- 肉料理の隠し味: 煮込み料理や炒め物の最後に少量加えると、味が引き締まり、風味豊かになります。
- 魚の煮付け: 煮魚の臭み消しや、骨を柔らかくする目的で少量加えるのも有効です。
柿酢は、そのまろやかさから「飲むお酢」として非常に優れており、まずは水や炭酸水で割って飲むことから試してみるのがおすすめです。
