拙者、近ごろは「みすてりい」と申す、異国の不思議話に目を通すのが楽しゅうてな。
何やら仕掛け箱を通じて、茶の間にて見ることができ申す。便利な世となったものよ。
さて、その不思議話の中で、よく目にする場面がござる。捕物に当たる与力や目明しの者どもが、連れ立って路地を歩きながら、あるいは茶店にて飯をつつきながら、あれこれと探索の相談をいたしておるのだ。
これが実に、気にかかる。町の衆に筒抜けになるではないか。ましてや、賊の手の者が耳をそばだてておったらどうするつもりか。
無論、芝居事ゆえ、まわりの者は何も聞いちゃおらぬ、という按排なのであろうが――
それにしても、なぜわざわざ人の集まるところで話すように仕立てるのか、拙者には解せぬ。
例えば、人通りの絶えた裏道にて、気を配りながら密談するような場面のほうが、むしろ真に迫ると思うのだがな。
まことに、絵空事とはいえ、もう少し気の利いた細工ができぬものかのう、などと、茶を啜りながらつい苦言を呈してしまうのでござるよ。
本日は、からりと晴れ渡り、気温は二十三度まで上がり申した。まことに過ごしやすき一日であった。