業務災害とは、労働者が、業務上の理由で、負傷、疾病、障害又は死亡することです。業務災害と認められれば労災保険の給付を受けることができます。ここに出てくる「業務上」について解説します。
労災における「業務上」の基本
新人社員(以下、新): 課長、おはようございます! 少しお時間いただけますでしょうか。労災について調べていたんですが、「業務上」という言葉の意味が、いまいちピンと来なくて…。教えていただけますでしょうか?
課長: おはよう! 労災における「業務上」は、非常に重要なポイントだから、しっかり理解しておこう。
課長: まず、労災における「業務上」というのは、簡単に言うと「仕事が原因で、ケガをしたり病気になったり、障害が残ったり、最悪の場合亡くなってしまうこと」を指すんだ。これが認められると、労災保険から給付を受けられるわけだね。
新: なるほど、「仕事が原因」なんですね。
課長: その通り。そして、「業務上」と認められるためには、「業務起因性」と「業務遂行性」という2つの要件があるんだ。
2つの要件:業務起因性と業務遂行性
課長: まず「業務起因性」というのは、ケガや病気などが「業務に原因がある」ということを意味する。要は、そのトラブルが仕事のせいで発生したのかどうか、という因果関係があるかどうかだ。
新: 仕事とケガや病気の間に、つながりがあるか、ということですね。
課長: そうだね。もう一つが「業務遂行性」だ。これは、「仕事をしている最中」にそのトラブルが起きたかどうか、ということ。私たちは会社に雇われて仕事をしているわけだから、その労働関係にある時に起きた災害でなければならない、ということなんだ。
新: つまり、仕事中に、仕事が原因で何かあったら労災、ということですね!
課長: その理解で概ね合っているよ。もちろん、ケースバイケースで判断が難しい場合もあるから、常識的に考えて申請して大丈夫だと思うけど、状況によっては労働基準監督署長が認めないこともあるんだ。
具体例で見てみよう!
課長: では、もう少し具体的な例で見ていこうか。
仕事中の事故は、原則として業務上災害だ。これには、作業の準備や後片付けの時間も含まれるし、手待ち時間中に仮眠していて事故に遭った場合も業務中と認められるんだ。
作業を中断してトイレに行って、トイレで転んでケガをしたなんて場合も、仕事中だけどトイレは当然の行為だから、業務上災害と認められることが多いよ。水を飲んだり、風で飛ばされた帽子を拾いに行ったりするのも同じだね。
ただし、仕事と関係ない私用で会社を抜け出して事故に遭った場合は、業務外になる。ただ、会社の仕事に必要なメガネを届けてもらって、それを取りに門まで行った途中の事故が業務上と認められた例もあるから、一概には言えないんだけどね。
自分の担当じゃない業務をしていて事故に遭った場合も、会社からの命令であれば業務上だけど、単なる親切心でやった場合は難しいこともある。状況による、という感じだね。
休憩時間中であっても、事務所や作業場で何かにつまずいて転んだ、なんて事故は業務上災害と認められることが多いよ。
でも、休憩時間を利用して会社を外出して事故に遭ったり、同僚とボール遊びをしてケガをしたりした場合は、業務とは直接関係ない行動なので、労災としては認められにくいね。
出張中の事故は、ほとんどの場合、業務上災害と認められる。例えば、ホテルで寝ている間に火事に遭ったとしても、出張という業務のためにホテルに宿泊しているわけだから、労災になるんだ。
ただし、用務が終わって観光したり、仕事が終わって飲み過ぎて転んだりした場合は、業務との関連性が低いと判断されて、労災にならないこともある。
新: なるほど、休憩時間や出張中も色々なケースがあるんですね。通勤中の事故はどうですか?
課長: 通勤中のケガも、ほとんどが労災に認定されるよ。ただし、通勤災害が認められるには、「業務のための移動」で、かつ「合理的な経路と手段」を使っている必要がある。
理由のない遠回りや寄り道は、「合理的な経路」とは言えないから、労災として認められにくい。
また、雪が降っているのに自転車に乗ったり、飲酒運転で事故を起こしたりするのも、「合理的な手段」とは言えないから、認定が難しくなるね。
課長: あと、病気の場合も少し注意が必要だ。
例えば、もともと持病がある人が仕事中に倒れた場合、その持病と仕事との関連性が検討されることになる。長時間労働だったかとか、仕事の内容が発症にどう影響したか、といった点がポイントになるね。
精神障害も労災認定の対象になるんだけど、これも業務起因性が必要だ。発症前の約半年間に、仕事による強い心理的負荷があったかどうかなどが調べられる。仕事以外の個人的な原因もある場合は、労災認定が難しくなる傾向にあるから、しっかりとした証拠集めが大切になるんだ。
新: 奥が深いですね…!でも、具体的な例をたくさん教えていただいて、すごく理解が深まりました!ありがとうございます。
課長: どういたしまして。労災は労働者の生活に直結する重要な制度だから、分からないことはいつでも聞いてくれ。